東京・立川のパブリックアート作品 高島屋が一転、現地保存へ
「ファーレ立川アート」はアートによる地域づくりの先駆け的存在で、米軍基地跡地を再開発したエリアに、「瀬戸内国際芸術祭」の総合ディレクターとして知られる北川フラムさんが関わって、36カ国92人による109点の作品を設置している。
岡崎さんの作品「Mount Ida-イーデーの山(少年パリスはまだ羊飼いをしている)」は高島屋や高島屋の子会社、東神開発などが所有。米軍基地拡張に反対した砂川闘争の歴史を念頭に置き制作した作品で、地下駐輪場の換気口をフェンスでおおう形で設置している。
高島屋広報・IR室によると、作品の移設先が見つからないまま、リニューアル工事が迫っていたことから計画について再検討したという。「高島屋は(歴史的にも)アートと深い関わりがあり、(この作品を)大切にしていきたいという思いで検討していた。美評連からの要望書で改めて作品の重要性を認識した。あの場所に作品を設置したまま、人々が憩える広場を作りたい。作品の保存を全体に、リニューアル計画を再検討する」としている。
立川高島屋S.C.のリニューアルを巡っては、百貨店区画である立川高島屋が今月末で営業を終了。今後は全館にテナントが入居するショッピングセンターとなる。【高橋咲子】
◇岡崎乾二郎さんのコメント
今回の一件は作家自身にとっても様々(さまざま)な問題を再考する機会になりました。感謝しています。この彫刻(だけではなくファーレ立川の計画全体)が構想されるときに、前提として受け止め考えていた歴史的背景、この場所の歴史的な意味こそを(この彫刻そのもの以前に)広く共有し残していかなければならないと感じています。
それは立川という一地域を超えて、世界で現在も繰り返されている(紛争など)問題とも繋(つな)がっていたこと、またそれが身近にあったこと、そして、すべての芸術作品の根幹にこの問題がいつもあったことこそを普遍的認識として保存し共有していきたいと願っています。