日本の現代アートシーンの今を知る。『六本木クロッシング2022展:往来オーライ』がスタート
行動規制に始まり、仕事の仕方や余暇の過ごし方にも変化が生まれたコロナ禍。展覧会の最初のトピックでは、身近なものへの新たな視点に言及する。多くの飲食店が閉店に追い込まれたり、デリバリーなどに営業形態の変更を余儀なくされたり、大きな影響を受けた業界のひとつが飲食業界だ。日本の文化や習慣を再解釈し、テクノロジーによって新たなかたちで表出させるメディアアーティストの市原えつこは、「未来の寿司の消費への懸念」から作品を手掛けた。
自然界の多様な生命の生態を観察し、ミノムシやヤドカリなど自然界の生きものとともに作品を制作するAKI INOMATAが、今回「協働」のパートナーに選んだのはビーバー。『彫刻のつくりかた』と題したインスタレーションを構成するのは、抽象彫刻を思わせる木のオブジェの数々だ。国内5つの動物園にいるビーバーに木片を渡し、噛んだり齧ったりしてもらって生まれたかたちを回収したINOMATAは、彫刻家にその木片を渡し、3倍のサイズで複製してもらった。また同時に、コンピュータで形状を読み取り、自動切削機(CNC)による複製も実施した
アイデアとディレクションはINOMATA。原型を制作したのはビーバー。その原型とともに展示されているオブジェを制作したのは、彫刻家と自動切削機。一見するとユーモラスな展示には複数の制作者が緩やかに共存し、創作行為の主体やオリジナリティという概念などの複雑な問題を、さらには自然界と人間との関係、かたちに込められた想いや造形行為の本質についてまで考えさせる。