コシノミチコさんが母校の制服デザイン 朝ドラ「カーネーション」のモデル母と2代でつなぐ伝統と機能性
◆気温や気分でボタンを開閉
綾子さんは和泉高の前身・岸和田高等女学校出身で、日本のファッションデザイナーの草分けとして知られる。岸和田市で洋装店を営みながら、女手一つで3人の娘を世界的なデザイナーに育て上げた。コシノ3姉妹の三女ミチコさんは和泉高を卒業後、英国を拠点にブランド「MICHIKO LONDON KOSHINO」を立ち上げ、世界的に活躍している。
新しい制服は紺色のブレザーが2種類あり、英国調チェックのスカートかスラックスかを選択できる。ブレザーは従来より襟が小ぶりで、4つボタンを配した。4月下旬にあった新制服のお披露目にはミチコさんも駆けつけ、「気温やその日の気分でボタンを開閉し、着こなしを変えられる。自由に格好よく、個性を表現してほしい」と目を細めた。
和泉高校百年誌によると、現在の女子の制服(冬服)のデザインは綾子さんが深く関与し、昭和24年に決められたもの。10のボタンをあしらったダブルのコートのような紺色ブレザーに、首元の詰まった大きな白襟が目を引くデザインが特徴的だ。
◆「一目で『いずこう』」
綾子さんが手がけた制服は70年以上の長きにわたり地域で愛されてきた。岸和田市に住む卒業生の女性(53)は、今も街中で見る後輩の制服姿に懐かしさを覚えるといい、「一目で『いずこう(和泉高)』と分かるオリジナリティーがあった」と述懐する。
「移り変わりの激しいファッションの世界で、長く親しまれてきたことはミラクル(奇跡)」と改めて母に敬意を込めたミチコさん。かつて自分も着用した制服のデザインに母娘2代にわたり携われたことを「夢のような仕事でプライド(誇り)。お母ちゃんもきっと『あんたよかったなあ』と言ってくれている」と喜んだ。
和泉高は数年前から制服の刷新に向けた検討を始め、昨年卒業生でもあるミチコさんがデザインを担当することになった。ミチコさんは当初、母のデザインを踏襲する形で新しいデザインを描いた。だが「時代とともに子供も気候も変化している。次代で長く愛される制服にしたい」。ミチコさんらしいオリジナルデザインも含めた男女計6案を提案。生徒と教員が人気投票を行い、最終的にミチコさん独自のデザインが選ばれた。
くしくも綾子さんが携わった今の制服の決定時にも、3つの候補案から生徒と教員の意見をもとに選ばれた経緯がある。ミチコさんはそんな偶然に驚きを隠せない様子で「自由な校風である和泉高校ならではの決まり方。長く愛され、自慢に思ってもらえる制服になってほしい」とほほ笑んだ。
◆増える制服のモデルチェンジ
制服のモデルチェンジを行う中学や高校が全国的に増えている。制服生地大手の日本毛織(ニッケ、大阪市)によると今年度、新しい制服に切り替えた全国の中学高校は748校(4月中旬時点)。令和3年度(234校)と比べ3倍近くも増えたことになる。
同社衣料繊維事業本部の松元孝宣部長は「例年ならば200校もあれば多い方。今後1~2年は同水準で制服を見直す学校が続くのではないか」とみる。
一方、モデルチェンジを行う学校が急増した結果、「学生服メーカーや販売店の負担は増えている」(松元さん)。生地の色や種類が多様化し、時期によっては短期間での対応を余儀なくされることもあるという。(木ノ下めぐみ)