2000年間話し手がいなかったヘブライ語、今や話者は世界中に、どうやって復活した?
ユダヤ人はかつて、ヘブライ語を話すことからヘブライ人と呼ばれていた。ヘブライ語が最も活発に使われていたのは、紀元前13世紀から紀元前2世紀頃、旧約聖書としても知られるヘブライ語聖書が編纂(へんさん)された時代のことだ。ヘブライ語は、最長で紀元前2世紀までは日常生活で使われていたと専門家は考えている。
しかし、紀元前2世紀の始め以降、ユダヤ人は徐々に激しい排斥と抑圧にさらされるようになっていく。ローマ帝国の興亡、中世、ルネサンスなどの時期を通じて、ユダヤ人はヨーロッパ各地への移住を余儀なくされ、それぞれが暮らす国の言語を受け入れていった。ユダヤ人はまた、ヘブライ語、ドイツ語、スラブ語を混ぜ合わせたイディッシュ語などの新しい言語も作り出した。
それでも、「聖書の民」と呼ばれるユダヤ人は、「トーラー(モーセ五書)」を研究・音読するなどの伝統の一環として、聖書を読むためにヘブライ語を学び続けたため、ヘブライ語の書き言葉は主に宗教的慣習を通して1000年以上にわたって生き続けた。
このほか、より教育水準の高いユダヤ人がヘブライ語で書簡を交わしていた例もある。たとえば一部の商人の間では、取引の記録としてヘブライ語が使われていたと、イスラエル、エルサレム・ヘブライ大学のヘブライ語史家メイラブ・ルーベニー氏は言う。10世紀の文書からは、当時は一般的に家事に従事させられることの多かった女性の中にも、ヘブライ語で手紙を書いたり、法的文書を交わしたり、取引記録をつけたりしていた人たちがいたことがわかる。また10~14世紀のスペイン、アンダルシア地方では、世俗的な詩がヘブライ語で盛んに書かれた。