『過労死ライン未満でも労災、労基署が判断見直す 深夜勤務など考慮』へのみんなの感想まとめ
【比較】労災認定、新基準と旧基準の主な違い
男性の代理人の松丸正弁護士によると、男性は2008年に調理師として採用され、15年2月から千葉県柏市内の庄やで勤務。翌16年1月の勤務中に脳内出血を発症して救急搬送された。男性は同年3月に労災申請したが、柏労基署は、残業時間が過労死ラインに満たないことから労災だと認めなかった。
過労死ラインは、労災認定の際、長時間労働が発症の原因といえるかを判断する目安。(1)直近1カ月で残業100時間(2)直近2~6カ月で残業が平均80時間――などとされるが、過酷な労働実態が反映されずに不認定となるケースが頻発。脳・心臓疾患の労災認定率は近年低下傾向にあり、残業が月80時間未満で労災認定されたケースは20年度では認定された案件の1割にも満たなかった。
労働問題に詳しい弁護士らによると、過労で倒れた本人や遺族らが、過酷な勤務実態から労災にあたるはずだと考えても、残業時間が過労死ラインにわずかに足りないため、労災申請自体をためらう例が少なくなかったという。
そこで、厚労省は9月、残業時間が過労死ラインに近ければ、休日のない連続勤務や深夜勤務の多さ、身体的負荷などを総合的に考慮し、労災を認定できると基準に明記した。この新基準で、労災認定の件数が増えると期待されている。
これをうけ、柏労基署は今月6日、男性の残業時間の平均が直近2~6カ月では最大約75時間半だったとした上で、「改正認定基準により評価し直した結果、過重業務による負荷が認められる」と判断。6年越しに労災を認めた。
柏労基署は男性側に「過労死ラインに近い残業時間に加えて、不規則な深夜勤務などの負荷を総合考慮した」と説明したという。
厚労省は松丸弁護士の照会に対して、労災の不認定が取り消され、新基準に基づいて認定されたのはこのケースが全国で初めてだと認めている。
大庄は「現在そのような事実を承知しておらず、コメントする立場ではない」としている。(遠藤隆史、阪本輝昭)朝日新聞社