シャインマスカットの未開花症、山梨県の高校で対処法授業
「下の先端部分が未開花症にかかっていても、上の部分はかかっていないのがほとんど。だから、その上の部分で房づくりできれば、収穫量も品質も保つことができる」
笛吹高校(山梨県笛吹市)の付属農場で、担当教諭である中村芳仁農場長(55)の説明を、果樹園芸課ブドウ専攻の3年生13人が熱心に聞き入っている。その後、指導を受けながら、手入れ作業を始めていった。
シャインマスカットだけで発生する未開花症は、花を覆うキャップ上の部分「花冠」が外れず、本来の5月下旬から6月にかけての開花時期に花を付けず、その後、粒が奇形だったり、中身が空洞になったりしてしまい、商品にならない症状だ。平成29年から農林水産省に報告されている。
同校の農場では令和2年にごくわずかで未開花症が確認され、以降は発生していなかったが、今年は一部のエリアでは約4割、シャインの果樹園全体では約2割の木で症状が出てた。そこで急遽(きゅうきょ)、未開花症の対処指導を始めることにした。
シャインマスカットの房づくりは枝の先端部分の花を使って、それよりも上の部分の花は切り落としていくのが一般的だ。未開花症は先端部分に多く発生し、逆に上の部分ではほとんど発生しないため、通常とは異なり、下の部分を切り、上の花で房を作る。開花前に房づくりすることもあるが、未開花症にかかっている下の部分を残し、かかっていない上の部分を切り落としてしまえば、商品にならず、収穫はゼロとなる。
同校の指導では、未開花症かどうかを見極め、さらに、通常とは異なる作り方を余儀なくされ、袋掛け作業が面倒にはなるが、収量や品質は維持できるように取り組む内容だ。
実家が桃農家の男子生徒は、「将来、シャインマスカットも手掛けたいと思って勉強している。最新の対処法を学んで今後に役立てていきたい」と話す。
農水省が4月に実施したアンケートでは、東北から九州にかけての30地域で過去に未開花症が発生しているという。多くの地域で品質や収穫量が低下した。発生年や地域に一定の傾向はみられず、原因は今のところ不明で、対策も明確ではない。
高額で取引されるうえ、病気にも強いシャインマスカットは、全国的に生産が増えている。山梨県でも令和3年のシャインの生産額は426億円で、前年に比べ35%増と大きく伸長した。中村農場長も「これまで大きな課題はなかったシャインマスカットにとって、未開花症が最大の問題になっている」と語り、対処法を徹底することで、収穫量や品質の維持を図っていくことの重要性を強調した。