シネマプレビュー 「戦争と女の顔」ほか3本
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「戦争と女の顔」
戦争映画の主人公は大抵、男性だ。だが、本作は第二次大戦中、ドイツ軍と壮絶な戦闘を繰り広げたソ連軍の兵士だった2人の女性の終戦直後の姿を描いている。戦後、従軍した女性兵士たちは独軍に勝利した英雄としてみられることはなかった。その理由が本作でも触れられている。複雑な戦争の傷を負った元女性兵の姿に驚愕(きょうがく)させられた。
1945年、従軍兵士だったイーヤ(ヴィクトリア・ミロシニチェンコ)は、レニングラード(現サンクトペテルブルク)の傷病軍人が収容されている病院で看護師として働きながら、男児を育てていた。
しかし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱え、その後遺症の発作のせいで男児を死なせてしまう。そこに男児の本当の母親で戦友のマーシャ(ヴァシリサ・ペレリギナ)が戦地から帰還。彼女も戦争による後遺症や戦傷を負っていた。2人の若き女性たちは、新たな生命を誕生させることに生きる希望を見いだそうとするが…。
監督・脚本はカンテミール・バラーゴフ。露映画。15日から東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田などで全国順次公開。2時間17分。(啓)
「キングダム2 遥かなる大地へ」
興行収入57億円と漫画の実写化映画としては近年もっとも成功したといえる大ヒット作「キングダム」(平成31年)の続編。引き続き主演は山崎賢人、監督は佐藤信介(しんすけ)。前作同様、漫画から抜け出たような絶妙の配役、スケールの大きな映像と目を見張るアクションの3拍子がそろい、スクリーンから目を離せない。
山崎の熱演はいうまでもないが、今回の注目は清野菜名(せいの・なな)が演じる暗殺者一族の女性、羌瘣(きょうかい)の活躍か。アクションを得意とする清野だが、疾走感あふれ、踊るがごとき殺陣(たて)の場面には息をのむ。
15日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。2時間14分。(健)
「ミニオンズ フィーバー」
人気キャラクター、ミニオンたちを描いた劇場アニメの最新作。最強最悪のボスに仕えることを生きがいとするミニオンたちがなぜ怪盗グルーをボスに選んだのか、グルーはどのように大悪党になったのか、その謎が明らかにされる。
1970年代、ミニオンたちは11歳の少年グルーのもとで日々悪事を働いていたが、ある日、グルーが何者かにさらわれてしまう。グルーを救出するため必死のミニオンたち。その姿に思わず心が和む。日本語吹き替え版にはグルー役の笑福亭鶴瓶(つるべ)をはじめ市村正親(まさちか)ら豪華俳優、声優陣が集結。
15日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。1時間29分。(啓)
「キャメラを止めるな!」
300万円の低予算で作って興行収入32億円のヒットを記録した「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督、平成29年)を、「アーティスト」などで知られるフランスのミシェル・アザナヴィシウス監督がリメークした。
映画の撮影隊がゾンビ映画を撮っていると本物のゾンビが現れて…。そこに大きな仕掛けが隠されているのが原作の面白さだったが、それも含めて全編忠実に再現。ただし、監督によると、本来、フランス人はゾンビ映画に親しみがない。そこをどう工夫してフランス版を成立させたか。原作に出ていた竹原芳子が、カギを握る存在として客演。
15日から東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマなどで全国順次公開。1時間52分。(健)