宇宙へ飛び立つ「オリガミ」、NASAのスターシェードがナショジオの表紙に
カトラー氏は科学的な被写体から芸術的な要素を引き出す方法を見つけるのが得意だ。スターシェードを上から見るとまるで、金箔を貼った花が開いたり閉じたりしているようだ。カトラー氏はすぐに、スターシェードが美しい表紙になると悟った。
スターシェードの撮影プロジェクトは、カトラー氏が米コロラド州にある航空宇宙エンジニアリング会社、テンデグ社のスタッフにスケッチを見せるところから始まった。現場での初日は、スターシェードに命を吹き込むため、自分の計画をスタッフに説明し、撮影戦略を練ることに費やした。
どんな撮影プロジェクトであれ、円滑な撮影を実現するには、関係者全員が同じ考えを持つことが重要だとカトラー氏は語る。「空間に入るときも、写真を撮影するときも、細心の注意を払う必要がありました。全員がこのプロジェクトに没頭していました」
金色のスターシェードは、宇宙空間で余計な光を遮るために使われる。宇宙望遠鏡の前で展開し、観測したい天体以外の恒星の光を覆い隠すのだ。
しかし、カトラー氏に言わせれば、スターシェードは美しく壮大なインスタレーション作品でもある。そのデザインは「フラッシャー・パターン」という折り方をベースにしており、打ち上げ時にはコンパクトな円筒形に折りたためる。
カトラー氏はスターシェードを覆うホイルからの反射を打ち消すため、倉庫全体に暗幕を取り付け、まるで上空に光があるかのように、4つの照明を天井に当てた。
スターシェードは重力制御の振り子を使って展開され、開くのに30分、そして、セットし直すのに3時間近くかかる。展開の難しさとスケジュールの関係で、撮影のチャンスは3日間で3回しかなかった。
カトラー氏は、スターシェード上のキャットウォークにコンピューター制御のカメラを固定させてほしいと頼んだが、最初は断られた。チームはスターシェードを損傷させないことを第一に考えていたからだ。だが信頼関係を築いていたおかげで、チームはカトラー氏の説得になんとか応じてくれた。カメラやコンピューターが設置された様子はまるで、NASAの管制センターのようだったとカトラー氏は振り返る。
カトラー氏はスターシェードの大きさを表現するため、人が入っている写真と入っていない写真の両方を撮影した。
「実物を見なければ、その大きさはわかりません。写真に人を加えることで、全体像をつかみやすくなります」とカトラー氏は説明し、写真の人々はとても小さく、スターシェードの周囲を飛ぶハチのように見えると言い添えた。
カトラー氏によれば、ナショナル ジオグラフィックとの次の仕事は緑色の恐竜「グナタリー」で、約3年前から取り組んでいるプロジェクトだという。このプロジェクトの主役は、緑色の骨を持つことで知られる唯一の恐竜だ。2024年2月、米ロサンゼルス自然史博物館に設置されることが決まっている。