20年ぶりに相馬野馬追へ出陣 父の死と東日本大震災・原発事故を乗り越え、変わらぬ誇りを胸にいざ!【福島発】
「野馬追本番っていう気持ちが高ぶっています。神旗争奪戦では、ご神旗を2本取ったことがありまして、その時は嬉しかったですね」
福島県南相馬市の古内賢二さんは、2023年の野馬追を「二度目の“初陣”」と話す。
祖父も父も、代々野馬追に出陣。それは家族の誇りであり、幼いころの古内さんにとって憧れだった。
18歳の時、騎馬隊に号令を出す螺役(かいやく)で初陣を飾り、その後は神旗争奪戦などでも武勲を立てた。
しかし、勤めに出ている古内さんに代わり、馬の世話をしていた父・正一さんが亡くなり、2003年の出陣が最後となった。その後、東日本大震災と原発事故で福島県外に避難。山梨県の企業で定年まで働き、ふるさとに帰ってきた。
一観客として見た2022年の野馬追。「関わりたかったというのが一番。本当に来年こそは自分がそういう立場になりたいって」と心が揺さぶられたという。
20年ぶりに野馬追に出陣したい・・・古内さんの思いを聞き、かつての仲間が馬を用意し力を貸してくれた。「ある程度乗ると身体は意外と覚えている」と話す古内さん。
長い間、野馬追から離れていたが、馬具のつけ方、甲冑の着付け、すべてが身体にしみ込んでいる。北郷騎馬会の菅野茂雄さんは「20年間我慢してたみたい。今まで溜めていた分、発散して獅子奮迅の活躍をしてほしい」とエールを送る。
螺は避難した際にも手放さず、ふるさとを思いながら響かせていた。武田流陣螺術師範螺役の菅野大作さんは「20年のブランクっていうのは全然感じない。古内さんとは小さい時から一緒に野馬追に出ていて、久々に北郷騎馬会に戻ってきたということで、大変嬉しい」と話す。
初陣の時に作ってもらった馬具や、父から譲り受けた和鞍。手入れをする度に野馬追が大好きな自分に気づかされた。
「色んな人の思いがこもっている道具なので。やっぱりね宝ですよ私の。周りの人にかなり助けられながら、支援を受けながら野馬追を続けられるということに感謝しています。父も多分向こうで喜んでいるんじゃないかと思っています」
変わらない野馬追への誇り。古内さんは20年分の思いを胸に、勇ましく出陣する。
(福島テレビ)