中川政七商店×スタジオジブリが広げた、『となりのトトロ』と工芸の可能性。
中川政七商店が今回、手がけたのは『となりのトトロ』と自然との触れ合いを楽しむことができる暮らしの道具。型染の宝箱や焼き物のどんぐり皿や一輪挿しなど全国の工芸産地の職人と手を組み、トトロたちが主人公の工芸品を生み出した。ぽってりとしたフォルムが魅力的なトトロが棲むくすの木を使ったトトロの木彫り人形は、この企画の構想段階から作りたかったものなのだ、と教えてくれたのは中川政七商店の商品デザイナー榎本雄さんだ。
「10年以上前ですが、宮﨑駿さんの講演会に伺う機会があり、鉛筆1本から生み出すものづくりへの熱意に感銘を受けたんです。それでどうしてもスタジオジブリと仕事をしたいと考えるようになりました。最初は問い合わせ先もわからずに手紙を書いて気持ちを伝えることからはじめました。その時に“こういうものが作りたいんです”とお送りしたのが、試作品のトトロの木彫り人形です」
スタジオジブリから「一度お会いしましょう」と返事がきたものの、そこからの話は一筋縄ではいかなかったと言う。
「スタジオジブリのみなさんは、当然ですがアニメーション、作品の世界をとても大事にされています。スタジオジブリにとってキャラクター商品は“ただ売るもの”ではないんです。物語の世界を、さらに一歩深めてくれるものでないといけない。だとしたらどういうものを提案すべきなのか、僕たちは考える必要がありました」
とはいえその考え方は、中川政七商店が得意とするものでもあった。
「僕たちは“日本の工芸を元気にする!”という旗印のもとでものづくりをしている。職人の技術や産地の文化を100年先に繋いでいくためには、何を残し、どう活かせばいいのかを常に考えています。その考え方とスタジオジブリの商品開発の発想は、とても近いところにあると感じました」
木彫りのトトロも、ただの“置物”ではいけない。日本の工芸を背景に持ちつつトトロらしさを表現するために、作り手探しにとことんこだわった。偶然、出会ったのが富山の井波彫刻だった。