音楽家・アーティストの坂本龍一さんが3月28日に逝去。美術作品も多数発表するなど、越境的な活動を展開
坂本は、2014年に中咽頭がんと診断され、治療の末に寛解。しかし20年にステージ4の直腸がんの診断を受けたと公表し、闘病を続けていた。手術後の21年3月からは作曲活動を断続的に再開し、日記を書くように制作した12曲を収めた最後のオリジナルアルバム『12』をリリース。これまで多くのアーティストとの協働を重ねてきた坂本だが、同アルバムのジャケットには李禹煥(リー・ウーファン)のドローイングを採用した。また、リリース前には事前収録されたピアノ・ソロ・コンサートの映像配信も行っていた。
東京藝術大作曲科を卒業後、78年に高橋幸宏、細野晴臣とYMOを結成。シンセサイザーを使った音楽で国際的に高い評価を得た。83年には大島渚が監督した『戦場のメリークリスマス』で俳優としてデヴィッド・ボウイ、ビートたけしらと共演、劇中音楽も担当した。また87年のベルナルド・ベルトルッチ監督『ラストエンペラー』では米アカデミー作曲賞を日本人で初めて受賞するなど、活動の場を海外に広げていった。
1980年代からは音楽家としての活動と並行して現代美術における発表も展開。ナムジュン・パイクとコラボレーションした映像作品《ALL STAR VIDEO (電子の拓本 All Star Video)》(1984)、浅田彰、RADICAL TVとコラボレーションした《TV WAR》(1985)、「共生」をテーマに膨大な映像素材とパフォーマンスを融合したオペラ『LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999』(1999)など、メディアとテクノロジーを介した歴史や政治への批評性をもった作品を多数発表。
またオペラ版『LIFE』のために集めた映像素材を用い、高谷史郎との協働で制作したインスタレーション《LIFE - fluid, invisible inaudible...》(2008)以降、メディア・アートの知見を用いたサウンドインスタレーション作品などを多数発表。2014年には最初の「札幌国際芸術祭」のゲストディレクターも務めている。
国内展覧会としては、ワタリウム美術館で「坂本龍一 | 設置音楽展」を2017年に開催。
また、現在アーティゾン美術館で開催中の「ダムタイプ|2022: remap」では、ダムタイプのプロジェクトメンバーとして参加しているが、同インスタレーションが坂本の展示作品の遺作となった。同展覧会は今年5月14日まで開催している。