写真紀行・瀬戸内家族 全身で輝く夏の海を満喫
四季のめぐりの中で、夏の始まりほど鮮やかに立ち現れる季節もほかにないだろう。しとしとと降り続く長雨にうんざりした頃、雷鳴が激しくとどろき、驟(にわか)雨が地上を打ち叩く。
やがて雲間から光が射し込み、濃紺の空がみるみる広がる中、真っ白な入道雲がそびえ立つように膨張してゆく。ドラマチックな夏の始まりは、いくつになっても心を弾ませてくれるものだ。
例年であれば梅雨が明けるのは七月の下旬、ちょうど「海の日」前後であることが多い。そこで今週は、夏本番にあわせてこんな写真を選んでみた。瀬戸内の海に飛び込んでゆくのは我(わ)が家の長女になる。浮輪(うきわ)につかまりそれを見上げているのが妻と次女。水面をのんびりと漂う地元の海水浴客を含め、なんとも楽しげな光景ではないだろうか。
実は五年前の「海の日」にも、同じ場所から飛び込む長女の写真を本連載で使ったことがある。どうやらこの光景は我(わ)が家の夏の風物詩らしい。
さあ今年もいよいよ夏本番。青く輝く瀬戸内の海へ、思いっきり飛び込んでゆこうではないか。
◆小池英文(こいけ・ひでふみ)写真家。東京生まれ。米国高校卒後、インドや瀬戸内等の作品を発表。広島・因島を中心に撮影した写真集「瀬戸内家族」(冬青社)を出版。