私学保護者団体からも「待った」 大阪府の高校完全無償化策で広がる懸念 「選択肢少なくなる」
完全無償化は大阪府の吉村洋文知事の目玉施策の一つだが、私学側に続き、私学に子供を通わせている保護者団体からも否定的な態度が表明された。多くの保護者から支持されている施策だが、私学側は負担増を懸念。保護者団体は、負担増を避けるために制度から離脱する学校が出れば、逆に生徒の選択肢が少なくなる、と訴えている。
府は来年度から府民が通う府内外の私立高の授業料について順次、所得制限を設けず無償化していく方針を表明している。現行制度では年収800万円未満世帯を対象に、府が定めた標準授業料(年60万円)の超過分を学校側が負担。所得制限の撤廃で、対象の生徒数は2倍になり、私学全体の負担額は約9億円増と試算している。
連合会の松井次郎会長はこの日行った記者会見で「制度から離脱する私学が出れば、生徒が行きたいと思っても無償化の支援を受けられない。それで進学をあきらめることになれば結果的に学校選択の自由が失われることになる」と訴え、意見書では学校側の負担が増す制度案の見直しなどを求めた。
制度への反発の声が相次ぐ完全無償化策だが、制度導入を歓迎する保護者も多い。中学2年の長女(13)を育てる大阪市中央区の男性会社員(47)は「これまで私学の経営状況が見えづらく、私学の教育の質と授業料の高さが比例するとは思わない。これを機に、無駄を省く経営努力を」と期待する。
また、子供が高校受験を終えたという大阪府豊中市の男性事務員(51)は「18歳の次男は学費の面で公立一択だった。無償なら私学の選択肢も増え、将来がもっと広がったかもしれない」と話す。
連合会の松井会長は制度を支持する保護者が少なくないことも踏まえたうえで「名目だけの完全無償化になっては意味がない。せっかく制度を導入しても、私学側が入学金を高くしたり、別の名目で徴収金を取るようになっては、かえって保護者側の負担は増える。私学側もきちんと運営できる制度にすべきではないか」と話していた。(木ノ下めぐみ)