「学生を励ます意味」で東京藝大が卒業作品を30万円で買う「買上」制度、知ってる?
【女子的アートナビ】vol. 290
『買上展』では、大学が所蔵する「学生制作品」約1万件のなかから、厳選された約100件を展示。 東京美術学校卒業生の横山大観や菱田春草など、今では巨匠と呼ばれる画家たちのデビュー作から、現在活躍しているアーティストたちの卒業・修了制作まで、多彩な作品が集められています。
本展は2部構成で、第1部「巨匠たちの学生制作」では、東京美術学校時代に集められた卒業制作を中心に展示。
第2部「各科が選ぶ買上作品」では、東京藝術大学で「買上」を実施している12の学科と専攻(日本画、油画、彫刻、工芸、デザイン、建築、先端芸術表現、美術教育、文化財保存学、グローバルアートプラクティス、作曲、メディア映像)から各科の教員によって選ばれた作品を紹介しています。
本展を企画された、東京藝術大学 大学美術館教授の古田亮先生に、展覧会の見どころなどお聞きしてきました。
――まず、『買上展』というタイトルがユニークで、とても興味をひかれました。
古田先生 そう言っていただけると、うれしいです。「買上」というのは、学内でやっている制度で、大学では当たり前に行われてきました。今回、過去を含めて買上制度を振り返ることで、東京藝大を知っていただくきっかけにもなるかと思いました。
――買上制度について、教えていただけますか?
古田先生 東京藝術大学が今の国立大学になったのが昭和24年ですが、その最初期から「買上制度」がはじまり、今でも続いています。買上となる優秀作品は、大学全体で決めるのではなく、各科がそれぞれ評価する形になっています。
前身の東京美術学校時代から、教育の成果を蓄積していこうという意図があり、卒業制作を収集していました。現在では、多くの科が首席という位置づけで作品を買い上げ、社会に出てからもがんばってね、と学生たちを後押しする制度として機能していると思います。
――買上制度の最初期と今の買上金額について、教えていただけますか?
古田先生 昭和20年代の最初期は3万円でした。その後どんどん上がり、最近は各科一律30万円です。物価指数との問題もありますが、金額はともかく、学生を励ます意味はあると思っています。