今、なぜユージーン・スタジオは人気なのか。「現代的」のキーワードから読み解く
展覧会「ユージーン・スタジオ / 寒川裕人 想像の力 Part1/3」が、8月5日まで東京・天王洲のMAKI Galleryで開催されている。「想像の力」と題した複数年にわたる展覧会の第1章に当たり、今回は複数のコレクターの協力のもと5つの作品シリーズをギャラリーに展示。また、東京近郊にあるユージーン・スタジオのアトリエを予約制で公開しているのも話題だ。美術批評・理論を専門としコンテンポラリー・アートをフィールドに評論活動を行う菅原伸也が、MAKI Galleryの展示をレビューする。【Tokyo Art Beat】
ユージーン・スタジオの作品を見ると真っ先に抱くのは、どこかでこんな感じの作品を見たことがあるという既視感である。思いつくままに挙げてみるだけでも、白黒のグラデーションからなる「Light and shadow inside me」シリーズの新作は杉本博司の「海景」や「Opticks」を、点描でキャンバスが埋め尽くされた「Rainbow Painting series」は新印象主義や草間彌生、郭仁植(カク・インシク) などの作品を、暗い部屋のなかで上から金箔と銀箔の粒子が降り注ぐ「Goldrain」シリーズはオラファー・エリアソンの《ビューティー》(1993)などを彷彿とさせる。
もちろん先行作品を想起させること自体は必ずしも悪いことではないだろう。ユージーン・スタジオ以外にもそうした作品は多く存在しているし、たとえ先行作品と似たような見た目や形式を持っていたとしても、それに異なる新たな意義を与えることは可能であるからだ。問題は、先行作品に対して、そして現代という時代においてユージーン・スタジオの作品がどのような更新を遂げているかである。もしユージーン・スタジオの「新しさ」が存在するのならば、果たしてそれはどのようなものであろうか。