この夏に訪れたい必見アート展5選
現代アート界の巨匠、ゲルハルト・リヒター。日本では16年ぶりとなる彼の大規模な個展が開幕した。見どころは4枚の巨大な抽象画からなる《ビルケナウ》。画題はアウシュビッツ第二強制収容所が置かれた村の名である。
ドイツ生まれのリヒターにとって、長くホロコーストは重要なテーマであった。1957年に手がけた『アンネの日記』の挿絵にはじまり、ナチスの安楽死政策の犠牲になった伯母や戦死した叔父らの具象画なども制作。自身の創作源となってきた大量のイメージ素材を集めた「アトラス」にも、ホロコーストに関する写真が多数収録されている。《ビルケナウ》の下地にあるのは、収容所で囚人が隠し撮りした4枚の写真。リヒターはそれをキャンバスに転写したのち、絵の具を塗り広げ、こすったり、削ったりしてこの絵を完成させた。歴史的な大虐殺を実際に描くことは可能なのか、またどのように描くことができるのか──。絵画の可能性、また「見ること・見えること」を探求してきた彼のひとつの答えともいえる作品だ。
『ゲルハルト・リヒター展』
会期:~10月2日(日)
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10:00~17:00(金・土曜は20:00まで)
※入館は閉館時間の30分前まで。
休館日:月曜(ただし9月19日は開館)、9月20日(火)
料金:一般 ¥2,200、大学生 ¥1,200、高校生 ¥700
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
ドイツ・ケルン市にあるルートヴィヒ美術館。その世界有数の質と量を誇る、20世紀初頭から現代までのアートコレクションは、市民コレクターが大きく寄与して形成されてきたものだ。いわば、芸術と芸術文化を愛する市民たちの豊かなつながりが礎にある美術館ーー。本展は、そのコレクションの代表的な作品約150点を、寄贈に関わったコレクターたちに焦点を当てながら紹介する。
たとえば、美術館に名を冠するルートヴィヒ夫妻が寄贈した、アンディ・ウォーホルやリキテンスタインといったポップアートや、マレーヴィチ、ロトチェンコなどロシア・アヴァンギャルドの貴重な作品群、パブロ・ピカソの選りすぐりの作品。ケルンで弁護士として活躍したヨーゼフ・ハウプリヒが寄贈した表現主義や新即物主義などドイツ近代美術の名品。優れた写真コレクションも見どころだ。美術館が市民コレクター、社会と結びついたひとつのモデルを提示するとともに、ドイツ表現主義からキュビスム、シュルリアリスム、抽象表現、2000年代以降の今日のアートまでの近・現代美術史のハイライトに触れられるのも、本展ならでは。
(左)カジミール・マレーヴィチ《スプレムス 38番》
1916年 油彩/カンヴァス 102.5 × 67.0 cm
MUSEUM LUDWIG, KÖLN / COLOGNE, ML 01294.
(右)モーリス・ルイス《夜明けの柱》
1961年 アクリル絵具/カンヴァス 220.0 × 122.0 cm
MUSEUM LUDWIG, KÖLN / COLOGNE, ML 01091.
『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡ー市民が創った珠玉のコレクション』
会期:~9月26日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木 7-22-2
開館時間:10:00~18:00(金・土曜は20:00まで)
※入場は閉館時間の30分前まで
休館日:火曜
料金:一般 ¥2,000、大学生 ¥1,200、高校生 ¥800、中学生以下無料
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)