【大人の習い事体験記】東京でのお茶会とその茶席を彩る衣服について
ぐっと寒さが深まってきた11月の終わり、「東京大煎茶会」が開催されました。前回に初体験した、大寄せの茶会(連載「ほ」)でのぞいた景色は、まるで海外旅行にでも行ったかのような別世界。気がついた時には、1日が終わっていたという感覚です。今回でお茶会も2度目。少しは余裕をもって全体の流れを学びたいところです。しかも、会場は新橋の東京美術倶楽部。ホームタウンでの開催なのですから、わずかながらもアドバンテージかもしれません。
前のめり気味に出かけて行ったお茶会ですが、会場が変わればムードもがらりと変わるものなのですね。前回の京都「月見の茶会」では、広大な萬福寺の境内に6流派が点在していたのに比べ、今回は重厚なビルのなかでの開催です。11の流派が3日に分かれ、日替わりで茶席を担当します。ビル内に4つのお茶室がぎゅっと設けられるだけに、訪れる客人や他の流派の方々と、物理的な距離もぐっと近くなり、前回とはまた違った趣に驚くこととなりました。
私の属する美風流席では、1日10回のお茶席が設けられ、各席20名ずつをお招きします。美風流は、いつも長蛇の列になるほどの人気と耳にはしていましたが、それを目の当たりにすることに。お手伝いをさせていただいた水屋から1歩外に出れば、そこは熱気に包まれる受付と待合室。みなさま目を輝かせ、まだ見ぬお茶席への期待にあふれるご様子を肌で感じます。お家元の表現するテーマや趣向、茶席を彩る衣、一期一会のお茶の味。そして、それを楽しみに待ち構える客人のお姿。この景色、どこかで見たことがあるような…。そう、それは、パリコレクションやミラノコレクション会場に漂う高揚感と一緒です。注目メゾンが今季はどんなテーマを発表するのか、どんな舞台セットなのか、そこでどんな光景が繰り広げられるのか、と心踊らせるあの情景。双方の目的や成り立ちは全く違うので少し乱暴な例えかもしれませんが、メッセージを五感で感じ、主客とともに礼をつくす。そして、クリエイティブな生の舞台を堪能する。そんな共通点を、感じずにはいられません。