東京の食のルーツ、「江戸前」の歴史と進化
かつての江戸の料理の起源は、江戸城の改築などで、江戸に呼び寄せられたさまざまな職人がその後も居を構えたことに由来すると言われている。
「江戸四大名物料理」とも称される、握り寿司、天ぷら、鰻、蕎麦はもともとは屋台が発祥で、職人が食べる食事だったからこそ、パッと素早く食べられ、日々の活力とされていたという共通点がある。これらの料理は、日本全土に広がり、世界からのゲストがこれらの料理を目当てに日本を訪れる。
かつて職人が愛した食は、作る側も職人だ。さらに良いもの、楽しんでもらえるものを追求する「求道心」とも言えるような努力がその変化を生み出してきた。たとえば、今の倍以上のサイズで提供していた寿司を、食べやすいように半分に切ったものが今の寿司になっているのは、その好例だろう。
そんな江戸の職人技の後継者たちは、いかに東京の食を理解し進化させているのか。「いまに生きる職人文化」を感じるイベント「江戸前進化論-Evolution of Edomae, Ten-Hands Dinner-」が東京・虎ノ門のイベントスペース「Social Kitchen TORANOMON 」で行われた。
これは5月、「世界一おいしい街をつくる」をテーマに都内各地で行われた東京都のイベント「Tokyo Tokyo Delicious Museum」のシークレットディナーという位置付けで、世界6カ国からのシェフやメディア、インフルエンサーなど35人を招き、東京の食のルーツである江戸前とは何かを伝えるためのものだ。
■屋台スタイルで5店の料理を
料理を提供したのは、東京に店を構える「鮨まつうら」の松浦修氏、「天ぷら元吉」の元吉和仁氏、「おそばの甲賀」の甲賀宏氏、「鰻はし本」の橋本正平氏、そして、2022年にアジアベストレストラン50でNo.1 に輝いた、東京のモダン日本料理「傳」の長谷川在佑氏の5名。屋台文化へのオマージュとして、キッチンの各セクションを屋台に見立てた。
この特別な会のプロデューサーを務めた実業家の本田直之氏は、イベントの趣旨を次のように語る。
「世界に東京の食を発信する上で、歴史を紐解く必要があると考えました。江戸四大料理は、今や世界で日本料理として愛されているけれども、その起源が東京であるということを伝えたい。歴史を紐解くと、当時は蒲焼も開いていなかったり、蕎麦も蕎麦切りがなかったり、天ぷらも作り置きだったり、今とは全く違う。伝統も進化しないといけないということも含めて、これからも進化する東京の食を感じてもらいたい」