幻のピアノ「スタインベルク」、滝廉太郎ゆかりの大分県竹田市に…「荒城の月」奏でる
スタインベルク社製のグランドピアノは、1908~40年の間にしか製造されていない。それでも、巨匠・フルトベングラーが指揮していた時期のベルリン・フィルハーモニーにピアノを納入した記録が残るなど、高い技術力を持っていたことがうかがえる。
日本で確認されているピアノはこれまで4台だけだった。今回が5台目で、九州では初めて確認された。
寄贈したのは、大分市の映像作家・尾登憲治さん(73)。半世紀前、音楽教師をしていた兄が兵庫県内で購入したが、実家で保管されていた。この間、妹や尾登さん自身もピアノを弾いてきたが、今夏に実家を処分することになり、引き取り手を探して実現した。
尾登さんは2015~18年に竹田市の地域おこし協力隊を務めた縁で、前市長の首藤勝次さん(69)に相談し、首藤さんが理事長を務める一般社団法人「竹田市健康と温泉文化・芸術フォーラム」が引き取ることになった。
ピアノが設置されるサロンは、今年5月まで地域おこし協力隊を務めたコントラバス奏者・森田良平さん(38)らが設立した「TAKETA室内オーケストラ九州」の拠点でもある。
贈呈式では、尾登さんが首藤さんを通じて森田さんに贈呈書を手渡した。その後、ピアノ、コントラバス、声楽によるミニコンサートが開かれた。滝廉太郎の遺作「憾」や「荒城の月」、「花」のほか、バッハの「G線上のアリア」が演奏され、市民ら約20人が聞き入った。
ピアノを演奏した鹿児島市のピアニスト、室屋麗華さん(34)は「鍵盤のタッチや音に重厚感があり、これまで弾いたことがない感じ。まろやかな音がして、当時の音色が楽しめる」と笑顔。尾登さんは、「多くの市民に愛されるピアノになってほしい」と語った。
ピアノは今後、市民向けのコンサートなどで活用されるといい、森田さんは「子どもから大人まで、市民が触れられるようなピアノにしたい」と話していた。