空虚さに満ちた現代を語る陶磁器。中国の芸術家・劉建華による日本初個展が十和田市現代美術館で開催へ
劉は1962年中国江西省吉安生まれ。現在は上海を拠点に活動している。江西省景徳鎮で育った劉は、磁器工房での職人時代を経て彫刻を学び、中国における経済や社会の変化や、それに伴う問題をテーマに、土や石、ガラス、陶磁器などを使って立体作品やインスタレーションを制作している。
その主な個展には「Liu Jianhua: Metaphysical Objects」(Fosun Foundation
Shanghai、上海、中国、2022)、「Liu Jianhua」(Pace
Gallery、パロアルト、アメリカ、2019)などがあり、第57回ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア、2017)、奥能登国際芸術祭(石川、2017)などの芸術祭に加え、今年開催される第14回光州ビエンナーレ(韓国、2023)にも参加する予定だ。その作品は、ポンピドゥー・センターやテート・モダン、ニューヨーク近代美術館などに収蔵されている。
本展のタイトル「中空を注ぐ」は、なかが空洞の陶磁器のかたちや流動的な釉薬を連想させながら、意味も内容もない「無意味さ」を作品に込めた劉の制作への姿勢を示している。空虚な「もの」や「こと」が広がっていく現代のありさまともつながっており、繊細で脆い陶磁器が空虚さに満ちた現代を語る。
メインとなる展示室では、ペットボトルや靴などの日用品を磁器で制作した《Discard》(2001-15)が展示。現代人が土に還らない素材に囲まれて生活していることや、処分できないものを蓄積し続けている現状を想像させるというものだ。
また、瓶や壺の口と首の部分だけを切り取った最新作《Porcelain Tower》(2021-22)や、同館の常設作品である劉の《Mark in the
Space》(2010)の造形ともつながる浮遊する枕《Regular/Fragile》(2001-03)、壁につたう墨汁や陶器の仕上げに使う流動的な釉薬を思わせる《Trace》(2011)など、初期から近年までの作品が展示される。