竜王戦七番勝負佳境へ…初防衛目指す藤井竜王VS巻き返し狙う広瀬八段
島朗九段 広瀬八段は竜王経験者だけあって自分のペースを貫き、理想的な展開で力を出し切った。挑戦者の落ち着きと冷静さが藤井竜王を封じ込めた気がします。
松尾歩八段 攻めの手を続けている中でちょっとブレーキを踏む▲7七桂など、中盤の難所での落ち着いた手が印象的です。緩急の付け方が実に巧みでした。
島 飛車をただで取らせる△7二飛(第1図)のような迫力のある手でも、本局の広瀬八段はすべて眉間で見切った感じですね。
松尾 藤井竜王は研究段階でのイメージと実際に対局した時のイメージに誤差みたいなものがあって、形勢の苦しさに結びついたかもしれません。
島 ただ、藤井竜王にもこれといって大きなミスはなかった。引きずるような負けではないでしょう。
谷川浩司十七世名人 △3三金型の角換わり腰掛け銀は変化球ですが、藤井竜王に時間をたくさん使わせて形勢も五分だったので、序盤は成功と言えます。
畠山鎮八段 先手からの仕掛けが難しかった。後手番の作戦としては、今後の公式戦でもありえます。
谷川 藤井竜王は銀交換した後に▲5六銀と打ったり、6五の桂をすぐ取らずに一番いいタイミングで取ったりと、丁寧な指し回しが光りました。
畠山 ▲5六角(第2図)と攻防に打った角を見捨て、△4五銀に▲4七金でと金を払った手順が非凡です。読みの柔軟性、大局観が素晴らしい。
谷川 感想戦で見ていて感心したのは、AI(人工知能)が指摘していて人間には指しにくい手も、藤井竜王は深く読んでいたこと。視野の広さを改めて感じました。