「現代と過去、行きつ戻りつ」「生きるとは…自問自答」 三島賞、山本賞受賞者が会見
三島賞に決まった朝比奈秋(あき)さんの受賞作『植物少女』(朝日新聞出版)が描くのは、ずっとベッドに寝たきりだった母親と、その娘の関係。意思疎通できない親子の姿を通して「生きること」の意味を問いかける。選考委員の中村文則さんは「善悪の判断というよりも、母親が娘にとってかけがえのない存在であり続けた、という現象を描いていることに感心した」と評した。
現役医師でもある朝比奈さんは「生きるとはどういうことかを自問自答して書いた作品。そのときにどうしても向き合わなければならない人を描いてきたし、これからもそれは変わらない」と述べた。
山本賞を射止めた永井紗耶子さんの受賞作『木挽町(こびきちょう)のあだ討ち』(新潮社)は江戸時代の芝居小屋が舞台。武家生まれの美少年が成し遂げた見事な「あだ討ち」の真相をつづる。「語り口が軽妙洒脱(しゃだつ)で巧み。シンプルで刺さる言葉が随所にある」(選考委員の荻原浩さん)として支持を集めた。
歴史小説「きらん風月」を産経新聞で連載中の永井さんは「行き詰まって書けない時期もあったけれど、続けてこられてよかった。これからも現代と過去とを行きつ戻りつしながら、今生きている方々にも届くようなものを作っていきたい」と健筆を誓った。