安土城をVRで復元へ 狩野永徳の屏風絵を「捜索」…滋賀副知事をバチカンに派遣
安土城は1576年、安土山で築城が始まり、信長は79年に移り住んだ。石垣の上に5層7階の高層天主(天守)を備えたと伝わる城は、豪華 絢爛けんらん で当時の土木技術を集大成した近世城郭の起源ともされるが、82年、本能寺の変の直後に焼失。現在は天主の土台部分の石垣や礎石などが残るのみで、城に関する文献や絵図はほとんど存在せず、全容は不明だ。
滋賀県は、築城450年に向け、VR技術で天主や城下町の風景をデジタル空間に再現することを計画。着目したのが、信長が安土桃山時代を代表する絵師の永徳に描かせたと伝わる「安土山図 屏風びょうぶ 」だ。この時代に描かれた唯一の絵画で、天正遣欧使節に託され、1585年にローマ教皇に贈られた。宮殿内に飾られた記録が残っているが、その後、行方不明になった。欧州で断片的な模写とされるものが数点見つかっているだけで、全体はわからない。
県は1982年に現地調査や関係機関への照会を実施したほか、2021年からは県のホームページで英語やイタリア語など7か国語で手がかりを求めているが、有力な情報はない。
このため、県は、文部科学省からの出向で、在イタリア日本大使館の勤務経験がある大杉住子副知事をバチカンに派遣することを決定。23日に文化教育省長官のトレンティーノ・デ・メンドンサ枢機卿を訪問し、調査協力を依頼する親書を手渡し、現地メディアにも情報提供を呼びかける。
千田嘉博・奈良大教授(城郭考古学)の話「断片的な模写から、永徳の屏風は細部まで精密に描かれていたと考えられる。所蔵品の中に紛れ込んでいるかもしれず、見つかれば一気に城の謎が解けるので非常に期待している。発掘調査では天主の土台の構造が解明されたり、信長愛用の豪華な茶器などが出土したりする可能性があり、重要な取り組みだ」