美しきボタニカル・アートの世界をSOMPO美術館で。11月、キュー王立植物園協力でスタート。
ボタニカル・アート(植物画)とは、薬草学や植物学と芸術が見事に融合したアート。人類は古代から病気の治療に植物を使っており、古代ギリシャの植物学者が薬草をまとめた『薬物誌』には後に植物の細密画が付け加えられたというし、古代エジプトや中国などでも薬草を見分けるための図譜が作られた。それらがボタニカル・アートの起源と言われている。
大航海時代になるとヨーロッパ諸国のプラント・ハンターが珍しい植物を追い求めて各国を冒険。彼らは画家を同行し、植物学的に正しいだけでなく、芸術性の高い作品が描かれるようになった。園芸を愛好する文化が発達したイギリスでは特にボタニカル・アートが好まれ、1787年には専門誌『カーティス・ボタニカル・マガジン』が創刊されたほど。
『ボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』は、〈キュー王立植物園〉の協力のもと、食用となる植物を描いたボタニカル・アートの展覧会だ。野菜や果物をはじめ、コーヒー、茶、カカオ、スパイス類などイギリスの食生活に密接に関わる食材を描いたボタニカル・アートに特化して展示。
ヨーロッパで古くから栽培されてきたリンゴやイチゴが象徴するものは? オリバー・ツイストがお代わりを頼んだせいで殴られるグルアール(薄いオートミール)の食材は? 紅茶のイメージが強いイギリスで先にコーヒーが普及した理由は? 文化や歴史的背景をひもとくと共に、昔のレシピや食卓を飾ったティーセットグラス、カトラリーなど食にまつわる資料類も展示。美しく“美味しい” ボタニカル・アートを通じて、イギリスの歴史と文化を辿ることができる。
〈SOMPO美術館〉東京都新宿区西新宿1-26-1。2022年11月5日~2023年1月15日。10時~18時。月曜、年末年始12月29日~1月4日休(ただし1月9日は開館)。
一般 1,600円。