煌めく《曜変天目》を見に、移転直後の〈静嘉堂@丸の内〉へ|青野尚子の今週末見るべきアート
〈静嘉堂文庫美術館〉は三菱第二代社長の岩﨑彌之助とその子、小彌太(三菱第四代社長)によって創設・拡充されたもの。世田谷に古典籍(書籍)を収める文庫と、美術品を見せる美術館があったが、そのうちの展示機能が丸の内に移転、〈明治生命館〉で新たなスタートを切った。
2022年は彌之助が〈静嘉堂文庫〉を創設してからちょうど130年の節目にあたる。当時、丸の内でオフィスビルの建設を進めていた彌之助は、その一角に美術館を作りたい、と願っていた。その彼の願いが1世紀以上の時を経て叶うことになる。
「静嘉堂@丸の内」の愛称がつけられた〈静嘉堂文庫美術館〉が入る〈明治生命館〉は1934年に竣工した建物。岡田信一郎が設計した、古典主義様式の堂々たる建築だ。美術館の移転にあたってはできるだけ元の姿を保存できるよう、改修は最小限にとどめている。展示室は天井の高いホワイエを囲んで三方に配されている。
オープニングを飾る展覧会『響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき―』は4章に分けて同館収蔵品のハイライトを見せる。《曜変天目》など所蔵する国宝7件すべてが登場するという、豪華なラインナップだ。
1章「静嘉堂コレクションの嚆矢―岩﨑彌之助の名宝蒐集」は彌之助の蒐集の原点を見せるもの。ここで見逃せないのは《大名物 唐物茄子茶入 付藻茄子》《大名物 唐物茄子茶入 松本茄子(紹鷗茄子)》の2つの茶入だ。これらはともに大坂夏の陣(1615年)で罹災し、焼け跡から破片で見つかったものを修復したもの。この2つの茶入をX線撮影したところ、破片を接いだ跡が浮かび上がった。漆で接いでいるのだが、肉眼では完全なやきものにしか見えない。漆で釉薬のような艶を出すため、黒、茶、緑、黄などの色漆を薄く塗り重ねて透明感や光沢を表現している。名人としか言いようのない技だ。