20世紀巨匠の約100点 西洋美術館で「ピカソとその時代」展
展示の核はドイツ出身の美術商、ハインツ・ベルクグリューン(1914~2007年)の個人コレクション。所蔵するベルリン国立ベルクグリューン美術館の97点に、日本の国立美術館所蔵・寄託作品11点を加えた計108点で構成し、うち76点が日本初公開となっている。
中でも半数近くを占めるのがピカソだ。青の時代の「ジャウメ・サバルテスの肖像」からバラ色の時代、古典主義の時代、さらにキュービスムの探究へ至る秀作がそろう。めくるめく作風の変遷、20世紀の美術界をリードした画家のエネルギーが充満している。
第二次世界大戦下、愛人ドラ・マールを描いた作品群がひときわ目を引く。「黄色のセーター」や「大きな横たわる裸婦」には、社会不安や画家の絶望などが色濃くにじむ。
実はベルクグリューン自身、1936年に政治的理由からナチス政権下のドイツを離れ、米国に渡っていた。戦後、一時帰国したドイツで荒廃を目の当たりにし、パリに移って画廊を構えたという。
図版に掲載された息子オリヴィエ・ベルクグリューン氏の回想によれば、画商はクレーの繊細で親密な作品と、文学的な感性に強くひかれていたそうだ。自画像のような「口数の少ない倹約家」、ピラミッドをモチーフにした「ネクロポリス」など34点が並ぶ。独自の造形原理をふまえつつ、ロマン主義的で想像をかきたてるような絵画世界が広がる。
油彩画やデッサン、晩年の切り紙絵まで、マチスの多様な表現も堪能できる。ピカソとマチスの絵、ジャコメッティの彫刻を組み合わせた最後の展示室は、ジャズのセッションのようで楽しい。
2023年1月22日まで。日時指定予約制。
また同年2月4日から5月21日まで、大阪市の国立国際美術館に巡回する。