仮想か現実か。本城直季による、ジオラマのような都市の姿。
本城の撮影に欠かせないのは、デビューから一貫して愛用している4×5インチ(通称:シノゴ)の大判カメラだ。ピントを合わせる範囲を極端に狭くし、あえて周囲の風景をぼかすことでジオラマのような写真になる。
「一枚一枚に込める思いがはっきりと感じられる気がするんです。ヘリコプターに乗った空撮での撮影でも変わりません」と本城。
巡回展である本展では、開催地を被写体とした特別な撮り下ろし作品も展示している。今回「東京」を撮影した新作シリーズは必見だ。
「都市を俯瞰して撮るとき、道路網が生きもののように思えることがあります。ぐちゃぐちゃなんだけど、すべてが用途を持ちながらまとまっている。けれどちょっとしたひずみで街が機能しなくなる危うさも持っている。特に東京の都市づくりは戦後の復興の中で行われたという歴史もあり、撮影を通して人々の “生きるんだ” というメッセージを強く感じました。
どんどん開発されていく都市は、近年発展するメタバースなどの仮想空間との境界が薄くなっているように感じられます。ジオラマのような写真には、仮想と現実が入り混じりつつある都市の姿が映し出されているのです」