世界一のレストランによるポップアップ「ノーマ京都」。提供される約13万円のコース料理全皿徹底レビュー!
現在、エースホテル京都にて、期間限定レストラン「ノーマ京都(Noma Kyoto)」が営業している(3月15日~5月20日)。
ノーマとは、デンマーク・コペンハーゲンのレストランである。ノーマはミシュランガイドにおける最高評価、三ツ星だけでなく、料理人の相互投票によるレストランランキング「世界ベストレストラン50」で第1位をこれまでに5回獲得している。
そのような評価を受けるのは、ガストロノミーの現代史について触れた別稿「食とアート:アートとしての現代料理を楽しむために」でも論じたように、ノーマが現在のガストロノミーの潮流に大きな影響を与えたスタイルを生み出したためである。ノーマは、エル・ブリをはじめとする「モダニスト料理」においてガストロノミーの世界にもたらされた新たな調理技術や、おいしさ以上に体験を提供することを目指す姿勢を引き継ぎつつも、北欧の自然に徹底的にこだわり、それを反映した料理を作り出した。レモンやオリーブオイルなど北欧の外から持ってこられた食材を使わず、アリやモミの木といった、一般には食材とみなされなくても食材となりうるものを用いた料理を提供してきた。現在は世界各地で、こうした土地への志向や料理のスタイルを示すレストランが見られるようになっている。
そのノーマが現在、京都で、約2ヶ月の期間限定レストラン、ノーマ京都を営業している。ノーマはそもそも技法――とくに味噌や醤油など麹を使った発酵――において日本料理の影響を受けたレストランだが、このポップアップでは日本の食材と食文化を自身のスタイルで解釈することを試みている。
ノーマ京都は予約受付開始直後に予約が完売したものの、筆者は幸運にもこのレストランで食事する機会を得た。ここではその料理の詳細について、その構成の効果について、そしてほかの現代料理レストランであるセントラル(ペルー)との比較においてノーマ京都がどのように特徴づけられるかについて論じる。
なおこのレビューは、フードエッセイストの平野紗季子氏、和菓子作家の杉山早陽子氏、アーティストの永田康祐氏と同じテーブルで食事をし、意見を交わすことから多くを得ている。互いに知覚を広げ合うようにして活発な会話を行なったことから、どこまでが誰の見解なのかは分けづらく、ここではその厳密な区分を示さないが、以下に誤りがあるとすればそれは私の非である。
また、料理が提供される際に主要な食材や調味料についてはスタッフから説明がなされるが、そこで使われる数多くの食材や調味料のすべてが説明されるわけではなかった。料理を説明してくれた料理人によれば、今回のコースでは比較的シンプルに見える料理でさえ、30種類に近い食材を使用しているという。そのため、本論が書き落としている要素も数多くあると思われる。