約500点の圧倒的熱量で迫る大竹伸朗の世界へ! 開催中の大規模展を徹底レポート。
次から次へとスタイルを変え、平面・立体・インスタレーション、さらには音の作品まで、あらゆる素材を使って変幻自在に制作を続ける大竹伸朗。現在〈東京国立近代美術館〉で開催中の『大竹伸朗展』には、9歳のときの作品に始まり、2006年の『全景 1955-2006』展(東京都現代美術館)以降の16年間で制作されたものまで、60年近くにおよぶ歩みの中で生み出された約500点もの作品が詰まっている。
「前の個展のときには想像もつかなかったような世界になってるよね。そのころはスマホもSNSもなかったし、この16年の間に本当にいろんなことがあった。だから今、自分が作ってきたものがどういう作用を起こすのか楽しみ」
展示は7つのテーマに分けられている。「自/他」は自画像だけでなく、彼というアーティストの形成に大きな影響を与えた他者についても言及されている。本物も偽物も含めて、揺らぎ続ける自己をつなぎ止める「記憶」もテーマの一つだ。このほかに「時間」「移行」などのテーマがある。
「この個展には俺の9歳のときの作品が出てるから、それから数えると60年近くになるんだけど、その間を振り返ると周期っていうか、幅が異なる流れがあるのに気づいた。たとえば『ビル景』が始まったのは20代前半だけど次に出てくるのは40代、というように。その中で60年ずっと消えないままモチベーションとしてあり続ける流れをテーマとして置き換えてる」
ただし、「テーマに沿って作ってる、というわけではない。今までも言葉に落とし込んだテーマで作ったことはない」と大竹はいう。
「言葉に落とし込んでわかってしまうと面白くなくなって作る気がなくなる。あえてわからないことをして批判される方がパワーになる。これ以上いっちゃうとマズイ、っていう方向があると、あえてそのマズイほうに行っちゃうわけ。それで案の定批判されるんだけど、でもそれがオレの価値観なんだ。でも大人の世界では衝動とか直観とかってあまり相手にされないから、ずっと闘ってきてる。
だから若い子には『いいね』なんて求めるなって言いたい。オレは『いいね』が一つでもあったらアーティストとしてダメだと思うタイプ。どこまでもゼロでいって、自分のやりたいことをやるのが信じられる価値観だと思う」