障害があるアーティストが描く「レンタルアート」 個性や技術を生かして社会を“彩り”自立の支援も
岡山市にある自動車販売店に飾られた1枚の絵。
パステルカラーで描かれたポップなキャラクターが店内を彩っている。
一方、老舗和菓子店では商品を描いた色鮮やかな絵が飾られている。
シキシマドウノカフェ・藤原智子副店長:
「わらピ」という商品を描いた絵は、実際の「わらピ」を持って写真撮影する人もいるので、インスタ映えや写真映えとして使っていただけている
来店客は「いろいろな色があって楽しい気持ちになる」「独特な雰囲気で色使いもすごい。口元が印象的」などと話した。
生本ひなの記者:
これらの作品は、障害があるアーティストが手掛けたもので、「レンタルアート」といって有料で貸し出されているものです
岡山市北区の就労継続支援A型事業所「ありがとうファーム」では、障害や難病を抱える人が働いており、レンタルアートの事業は2016年から始めた。
ここで働くアーティストの1人、カナピさん(20)は自閉症を抱えながら、幼いころから得意だった絵を生かして、2023年からレンタルアートの作品を手掛けている。
ありがとうファーム・カナピさん:
ただ自分が好きで描いているだけだから、人に評価されると思っていなかったけど、褒めてもらえるとちょっとうれしいから、頑張ろうと思いながら描いている
レンタルアートは企業と年間で契約し、作品を自由に交換することができる、いわゆる「サブスク」の事業だ。
契約料の7割が制作したアーティストの給料に充てられる仕組みで、一定の収入が継続的に得られるため、事業所も事業に手ごたえを感じている。
ありがとうファーム アートディレクター・深谷千草さん:
当初は売ることも考えたが、売ってしまうとそこで作品は消えてしまうし、収入もストップしてしまうという課題があった。継続して自立をしていくためにはどうすればいいかと考えたときに、レンタルしてもらい継続的に収入を得て、そして自立するということを考えた
契約数は年々増加し、現在は約50社、100以上の作品がレンタルされていて、人気のアーティストにはボーナスも。一般の企業の業務に困難を抱える人でも、個性や技術を生かすことで収入につなげることができる。
ありがとうファーム・カナピさん:
自分で貯金もできるし、将来につながることもできる。次ももっと頑張ろうと自信にもつながる
今回、カナピさんへ新しい作品づくりの依頼があった。玉野市の海沿いにあるホテルで展示される絵で、「瀬戸内」や「旅」などをテーマに6作品を仕上げる。
「波を描きます」と下書きせず、思いのままマーカーペンを走らせるカナピさん。
ありがとうファーム・カナピさん:
海の生き物が好きでよく描くので描いてみた。マナティー、エビ、ウツボ…これはホテルに行くまでに見た橋。電車が下に通っている。景色がきれいだったので描いた