【瀬戸内国際芸術祭2022】宇野港|金氏徹平らによる瀬戸内海をのぞむアートを見る。
金氏徹平《S. F. (Seaside Friction)》
70年ほど前に造られた〈玉野競輪場〉の改修工事によって出た椅子や手すり、競輪選手の肖像写真などを素材に制作されたオブジェ。3色の椅子の座面が壁になっている。競輪選手の写真はあえて、競輪選手らしくなく見えるものを選んだ。鑑賞者はいったいそれが誰なのか、なぜここでアートの素材になっているのか、想像をかき立てられる。作者が『大地の芸術祭』が行われる新潟県・越後妻有地区で撮影した写真も。作品があるのは海辺の公園。ヤシの木の間で、隣接する競輪場のかけらが佇む。
宇野港にはかつて、高松までの宇高連絡船が発着するターミナルがあった。宇高連絡船は瀬戸大橋の建設などをきっかけに廃止されたが、宇野港からは今も直島などへの便が発着している。トルコの作家、アイシャ・エルクメンはその宇野港に四国の形をした作品を設置した。ステンレスのパイプで作られたオブジェは夜になるとライトアップされる。今も海でつながる島の存在を感じさせる作品だ。
ムニール・ファトゥミ「実話に基づく」
病院として使われていたが、40年近く空き家になっていた建物。その手術室や薬剤室に映像や写真作品が設置されている。
この作品は第一次世界大戦後、さまざまな民族が住んでいたパリ郊外のアパートが破壊される様子を映したもの。撮影は約20年前に行われた。作者はモロッコ出身、フランスで長く活動しており、宗教や政治など西洋文化のアウトサイダー的な視点から制作を続けている。かつては人が住んでいたけれど今は廃屋になってしまった空間で住むこと、住み続けることについて問いかける。
本州からの芸術祭の入口になる港。宇野港・JR宇野駅の周辺に新作が集まっている。
宇野港へは、岡山駅から快速で茶屋町駅(約20分)~JR宇野線に乗り換えてJR宇野駅(約25分)へ。JR宇野駅から宇野港は徒歩5分。宇野港周辺のアートは歩いて見て回ることができる。
宇野港からは「宇野 – 直島(宮浦)」「宇野 – 直島(本村)」「宇野 – 豊島(家浦) – 豊島(唐櫃) – 小豆島(土庄)」などの複数の航路があるが、本数に限りがあるため、詳細は公式サイトにてご確認を。