北米で続々、アジア系料理コミックのおいしくて深い世界
イラストレーターのリンダ・イーはコロナ禍で、四川料理を恋しがる家族のために『パンダ・カブ・ストーリーズ』というコミックを描きはじめたという。
同メディアはイーの作品の一つ「キュウリのたたき」のレシピを取り上げ、「材料と作り方以上のものが記されている」と分析。料理のアドバイスが吹き出しに記され、効果音や、キュウリをたたくネコとパンダが描かれている、とコミック独特の様式について説明している。
日系米国人のイラストレーター、サム・ナカヒラは2019年にグラフィックノベル『ビルの静かな革命──カリフォルニアの食文化の日系米国人職人』(未邦訳)を自主出版した。質の高い地元産の食材にこだわる食料品店を経営する主人公のビル・フジモトをとおして、米カリフォルニアの食文化で日系人が果たした役割を再評価したことで、日系農家から感謝のメッセージを受け取ったそうだ。
この両者の作品について同メディアは「米国やカナダの文化で長年流布してきたアジア料理に対するネガティブなステレオタイプと一線を画している」と評している。
アジア系作家によるコミックのアンソロジーを編集した台湾系のジェフ・ヤンは、アジア系が「犬食い」など食べ物にまつわる中傷をされてきた、と同メディアで指摘。一方、アジア系コミック作家は移民の食文化を親しみやすく肯定的な見方で捉え直しており、ビジュアルを駆使して「私たちの食べ物がどのようなものかを示すことができます」と言う。
こうしたアジア系のコミックのなかには、食に関わる人種差別の問題に真っ正面から取り組んでいるものもあるという。その例としてフィリピン系米国人のイラストレーター、ジョシュア・ルナの作品が挙げられている。
ルナの作品では、学校でアジア料理の弁当を「臭い」と笑い物にしていた白人の子供が、直後のコマでは食通ぶった大人になり、白人シェフが作ったフィリピン料理に賛辞を贈るという二場面が対比されている。