「エマイユと身体」展、銀座メゾンエルメス フォーラムにて
本展は、エルメス財団による、自然素材とそれに関わる職人技術や手わざについて再考し、継承、拡張を試みる「スキル・アカデミー」の活動の一環。8月に予定している『Savoir & Faire 土』(岩波書店)出版を記念して、関連する作品を展示する。参加するアーティストは、シルヴィ・オーヴレ、ジャン・ジレル、内藤アガーテ、ユースケ・オフハウズ、小川待子、フランソワーズ・ペトロヴィッチ、安永正臣の7人。
アーティストたちが試行錯誤しながら辿りつき、そして生みだされる造形。本展よりその一部作品をご紹介。
その質感や造形から骨や灰が身体の一部であることを思い出す、安永正臣の作品。釉薬に石や金属、ガラスなどを混ぜた独自の材料から、かたちをつくり、砂やカオリン(磁器の原料)に埋めて焼き上げ、掘り出すという手法を用いている。
シルヴィ・オーヴレによる、フェティッシュな箒。日常的なものに物語が立ち上がる。
水のように透き通る釉薬、ひびや欠け、壊れることとつくること。うつわと原初のかたちとの境界を行き交う小川待子。
熱によって変化し陶器の表面を覆うエマイユは、被膜を想起させる。皮膚のようでもあり、保護される隠れ家のような感覚も。内藤アガーテはインスタレーションで、儚いセラミックと身を置き、あるいは身を隠すために作品を用い、そしてユースケ・オフハウズは、自分の記憶を頼りに小さな建築物を作っている。
こちらは「曜変天目」の探究を続けるフランスの人間国宝、ジャン・ジレル(Jean Girel)のエマイユが生み出した風景。
ジャン・ジレルは、製陶が始まるずっと前、先史時代の人類が魅せられていた貝殻や亀の甲羅、歯、ターコイズなどの石などには、のちに釉薬となるものと、どこか奇妙な共通性があるのでは、と書籍『Savoir & Faire 土』にテクストを寄せている。
エマイユ(釉薬)と人間の手から生み出された作品たち。その追求は陶芸の世界を拡張し、人を惹きつける根源にまでつながっている。ぜひ訪れて。