受け継がれるバウハウスの教え。ジョセフ・アルバースの授業を受けに〈DIC川村記念美術館〉へ。
ナチスの迫害により1933年にバウハウスが閉校になるとジョセフはノースカルロイナ州に設立されたばかりのブラックマウンテン・カレッジに招聘され、夫婦はアメリカに移住した。この学校では芸術がカリキュラムの中心に位置づけられ、アルバースは自然物を課題に用いるなどしながら色彩や造形の基礎を教える。アルバース自身は抽象絵画や版画にも取り組み、校内の内紛によって同校を離れるまで、充実した15年間を過ごした。
1950年、アルバースはイェール大学のデザイン学部長に就任する。ここでは色彩やドローイングを教えたが、とくに力を入れたのが色彩論だった。アルバースは着任以来、20年以上にわたって「正方形賛歌」のシリーズを制作する。正方形による特定のフォーマットに色彩を配置し、隣り合う色彩がさまざまな効果を生み出すというものだ。彼は色彩を移ろいやすい、相対的なものととらえていた。また色彩が見る人にどのような作用をもたらすか、といった研究をまとめ、1970年に主著『色彩の相互作用』(邦題:『配色の設計』)として発表した。
展覧会には1972年に出版した版画集『フォーミュレーション:アーティキュレーション』も出品される。それまでに制作した作品をもとにした、彼の集大成ともいえるものだ。各作品にはアルバース自身のテキストがつけられている。そのテキストをイメージとともに読むことで、彼の思考をより深く理解することができるだろう。