湯河原に夢をテーマにした温泉旅館〈夢十夜〉が誕生。
〈夢十夜〉は、2021年に廃業した、昭和初期に開業した温泉旅館をリブランドするかたちで誕生した、湯河原の特徴を生かしたコンセプト旅館だ。湯河原ゆかりの文豪・夏目漱石が不思議な夢を綴った短編集『夢十夜』をモチーフに、「時間を忘れて夢に浸れる空間」を演出する。
館内のパブリックエリアには、フォトジェニックなスポットや個性的な演出を散りばめた。なかでも特徴的なのが、「白夜夢」と名付けられたライブラリーだ。文学、漫画、雑誌、写真集など300冊の本が並ぶライブラリーには、ベッドが用意されていて、体を横にしながら、本の旅を楽しむことができる。
客室は4タイプ19室。そのすべてが本を主役にした部屋となっていて、テレビの代わりに100冊の本やハンモック、コーヒーミルなどを配した。小説『夢十夜』の第一夜に登場する「百合」を部屋名にした1室だけのスイートルームには、風呂のかたちをしたソファが置かれている。スタンダードルームは、ブックカフェを彷彿とさせる客室だ。昭和建築らしい間取りを生かした、コンセプトルームは6室。漱石の短篇集にたびたび登場する「モナリサ」や「金魚」という言葉をテーマに“読む部屋”に仕上げた。
鏡の空間が無限に広がる世界観を実現した館内のレストラン〈燭(しょく)〉では、フランスでの料理経験を持つ総料理長がイノベーティブフュージョン料理を提供。入り口を入ると「ベストセラー作鹿」(鹿)が出迎えてくれる。
「明湯」「暗湯」と名付けられた温泉大浴場は、それぞれ異なる表情を持つ。「明湯」はパステルカラーのタイルや鮮やかなステンドグラスをあしらった空間で、「暗湯」はモノトーンの落ち着きのある空間だ。湯河原は、夏目漱石の小説『明暗』の舞台となった場所。壁面には夢の映像を投影し、入浴中も夢の中にいるようなひとときが過ごせる。