『NHK、疑惑の軍艦島報道 「端島炭坑以外と結論至らず」元島民に回答』へのユーザーの意見まとめ
【写真】長崎市の端島(通称・軍艦島)
「現時点では明確な根拠があるとまでは言えない内容も一部存在するものの、番組の映像が端島炭坑以外のものであるとの結論には至らなかった」
NHKは昨年12月、元島民らに文書でこう伝えた。
「緑なき島」は昭和30年11月17日にNHK総合で放送された短編映像。軍艦島での人々の暮らしぶりを報じた「風土記」的な内容だが、坑内映像での作業風景は元島民の証言や坑内規則に反している。
ふんどし姿の作業員が坑道をはい、ツルハシを振るい、石炭を入れる「スラ箱」を押す-。作業員は規則で定められている照明器具「キャップランプ」をつけず、坑道の照明灯には防爆装置が施されているようにはみえない。
元島民が約70年も前の映像を問題視するのは、映像が韓国側の〝反日プロパガンダ〟に利用され、不当な理由で故郷がおとしめられているためだ。
NHKは平成22年にこの映像を韓国の公共放送KBSに提供したという。その後、韓国のテレビ局やネットメディアが軍艦島を「朝鮮人強制連行」と関連づけて報じる際、坑内映像を引用するようになる。韓国・釜山の「国立日帝強制動員歴史館」では現在も映像が使用されているという。
石炭採掘は確かに厳しい労働環境だっただろう。だが軍艦島をはじめとする石炭産業の発展は戦後の日本の経済復興に大きく貢献した。元島民の故郷に対するプライドは「地獄島」などレッテルを貼る韓国の報道により傷つけられている。
NHKも元島民の要求に応じ、「緑なき島」について調査を開始した。令和2年11月以降、関係資料や書籍を調べ、NHKの退職者ら約70人や専門家約20人から聞き取ったという。
その過程で元島民の主張を否定する事実も確認された。
NHKには昭和22年と同35年ごろ、端島坑内を撮影した映像が保管されており「裸姿の作業員が存在した」という。専門家によれば、元島民が「使っていない」と主張するツルハシについて「メインにすることはないにしても、補助的に使うことはあったと聞く」(郷土史家)という。
ただ、専門家らが異口同音に「考えられない」と疑問視する点が坑内での照明の在り方だ。
映像では電球がむきだしの状態で使われている。はずみで割れると、火花でガス爆発を誘発しかねない。また、端島坑では大規模停電もあったという。作業員が漆黒の坑道から生還できたのは、キャップランプをつけていたためとの指摘もある。
産業遺産のある専門家は産経新聞の取材に「坑内照明に防爆装置をつけていたはずだ。作業員にキャップライトがないのは命に関わる問題だ。三菱鉱業(現 三菱マテリアル)が運営した大炭鉱でヘコ(ふんどし姿)での作業もあり得ない」と強調する。専門家はNHKの調査にも応じ、同じ意見を伝えたという。
自民党の山田宏参院議員は「どっちつかずの結論を出していることに怒りを感じる。韓国側の主張を否定することから逃げ続け、元島民の名誉を傷つけている。第三者を主体とした調査委員会をたち上げるべきだ。国会で厳しく正していく」と産経新聞の取材に語る。和田政宗参院議員も「NHKは、韓国KBSが日本をおとしめるような使い方をしていることに撤回と訂正を求めるべきだ」と強調した。
NHKは産経新聞に「番組の映像は、韓国の法律上では、著作権の保護期間が満了し、NHKの著作権が主張できない可能性が高いと聞く」とコメントした上で、「元島民の方々が故郷がおとしめられているとお感じになることは遺憾に存じます」と複雑な心境ものぞかせる。
元島民らの主張と異なる事案が確認されたとしても、それらは例外的なケースに過ぎないのではないか。1年もかけて調査すれば「緑なき島」の坑内映像が、当時の作業実態と異なっていたことが分かるはずだ。NHKが導き出すべき結論は「端島での撮影とは断定できなかった」が適当ではないだろうか。
元島民の中村陽一氏(83)は産経新聞の取材に「NHKは端島の通常の坑内の映像ではないことをうすうす分かったということが報告書から読み取れる。例外事象を常時あるかのごとく言うのは間違っている。島民とNHKとの話し合いを要求したい」と語っている。(奥原慎平)