ヨシタケシンスケの初個展、楽しい仕掛けがあちこちに!
『りんごかもしれない』や『こねて のばして』、『もう ぬげない』など、子どもが誰でも持っている想像力をどこまでも広げてくれる作風。そして、愛らしいキャラクターと緻密な構造の絵が多くの人を惹きつける絵本作家のヨシタケシンスケ。初の大規模個展が世田谷文学館で始まった。
絵本作家の原画展というと、印刷物とは違う色味やテクスチャーの原画をなるほどと言いながら見るのが一般的だが、ヨシタケさんの場合は少し異なっていた。
「まず僕の原画はすごく小さくて、色もついていない。伝えたいことは、絵本を読んでもらえばわかる。だから原画を展示すると絵本よりも情報量が減ってしまうんです。外出が大変なこんな時期にわざわざ来てくれる人たちをどうやったら楽しませられるだろうと考えました。ひとつは、絵本ができるまでの僕の頭の中を見せること。もうひとつは、五感で楽しんでもらえる展示にしたいとあれこれアイデアを出していきました」
会場に入ると、壁一面に小さなメモがずらり。ヨシタケさんが20年以上書き続けているスケッチ2000枚の複製が展示されている。会社員時代、手元で隠しながら上司の悪口を描いていたそう。その習慣となったスケッチが後の絵本作家を生み出したのだから落書きも捨てたもんじゃない。
壁面には、絵本を生み出す際のヨシタケさんのアイデアスケッチが展示されている。ヒット作『りんごかもしれない』では編集者からの「りんごで遊ぶ100の方法」というお題に対し、「りんごじゃないかもしれない100(?)の可能性」を提案するやりとりが。絵本ができるまでに、どんなことを考え、どうアイデアを展開させ、最終的なかたちに落ち着いたのかがわかるのだ。「机上の空論が大好き」と彼はよく口にするが、想像力の果てしなさを痛感する。
大人が壁面の展示に集中してしまったら、子どもは他のコーナーでストレス発散すればいい。会場には絵本から飛び出した体験展示が7か所用意されている。「じごくのトゲトゲイス」に座ったり、うるさい大人にりんごを投げたり、つまらない顔で写真を撮ったり。五感をフルに使って、ヨシタケ絵本の世界に没頭したい。