コロナ禍でも美術品が億単位で落札される理由は? 元「国際金融のプロ」が解説〈dot.〉
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倉田さんは公開の場で開催されるオークションを通じて富裕層の資産管理などを行うシンワワイズホールディングスの経営者。日々、富裕層と接しているが、この2年程度でその動きが大きく変わったという。
2019年あたりから、資産の一部をダイヤモンドに変える資産家がじわじわと増えていた。富裕層にとって、資産をさまざまな形で保有・管理するのは当然のこと。資産の一部をダイヤモンドに変えてもおかしくはないが、変化が見られたのはその額だ。
「新型コロナの感染拡大前、一人あたりの変換額はせいぜい1千万円程度でした。でも、2020年ごろからその額がみるみる上がり、最近は1億円をお持ちになる方もいます」
倉田さん曰く、この現象の根っこは、アート作品人気にも通じるという。もう少し解説しよう。
■バブル崩壊で変わった日本人のアート感
倉田さんによると、この30年、日本のアート界は「暗黒の時代」だったという。30年前といえば、日本でバブル崩壊が起きたとき。当時倉田さんは、外資系の金融機関でファンドマネージャーをしていたが、97年の金融危機では一時的に金融担当大臣秘書官として助言を行った。
当時の日本は、バブル崩壊による不良債権で信用力が低下し、ドルの調達が困難になっていた。貿易立国の日本がドルを使えないということは、国が立ち行かなくなるということ。倉田さんは当時を「日本発の世界大恐慌が起こる可能性があると思った」と振り返る。