京都・清水寺で、柿本ケンサクによる「時間」をテーマに今を見つめる展覧会が開催。
〈音羽山清水寺〉開催の『FEEL KIYOMIZUDERA』とは、言語、人種、文化などの垣根を越えた前衛的な表現を通じ、祈りに対する新解釈や視点を発信して、未来の仏教寺院の在り方を模索するプロジェクトだ。
そのプロジェクトに関する今回の展示にあたり、柿本が掲げたテーマは「時間」。“今この一瞬を生きている”という概念を表現したいと、作品作りに向き合った。その底辺にあるのは、溢れかえった豊かさという情報群に揺らぎ、惑わされて、自ら気付かない間に見えなくなってしまう現代だからこそ、「豊かさを削ぎ落として、本当に大切なことを抽出する必要がある」との思い。それが、今回の作品を生み出す衝動になっている。
本展覧会には3つの新シリーズが登場する。その一つ『TIME』シリーズは長年の旅を経て、地球にたどり着いた光の旅と時間を1枚のフィルムに閉じ込めた。一度は写真として切り取られて止まった光の旅を清水寺の西門に掲げ、注ぎ込む夕陽を取り込んで撮影。まさに、再び動き出した光を捉えた作品と言える。
〈KAN-NON〉は、清水寺のご本尊『十一面千手観音菩薩』をモチーフにした新シリーズ。11の女神像のポートレートの額に、西門に差し込む西陽を通過させて再撮影。さらに清水寺の庭園の風景と共に、それらの女神を撮影した。
〈KAN-NON〉は、清水寺のご本尊『十一面千手観音菩薩』をモチーフにした新シリーズ。11の女神像のポートレートの額に、西門に差し込む西陽を通過させて再撮影。さらに清水寺の庭園の風景と共に、それらの女神を撮影した。
そして、もう一つの新シリーズ〈Sky Tunnel〉は、人口知能に柿本自身の写真を学習させ、AI現像して現れた像を切り取った過去作〈Time Tunnel〉に、さらにAI学習をさせて作り上げたもの。
永久の光を閉じ込めた1枚1枚を通して、柿本が創出する新たな祈りの場を感じられる今回の新作展。それは答えを提示するものでなく、「心の解像度を高め、“選択肢”を広げる作品」でもあるのだ。