『岸田首相、経済活動重視へかじ 参院選へ「成果」急ぐ コロナ第6波、備えに不安も〔深層探訪〕』への皆さんの反応まとめ
【図解】経済対策の概要
◇緊急事態でも酒提供可
「コロナ禍で傷んだ経済を立て直し、社会経済活動の再開を後押しし、経済を一日も早く成長軌道に乗せる」。首相は19日、首相官邸で開かれた経済財政諮問会議でこう力説した。
改定版は安倍・菅政権時代のコロナ対策を大きく転換する内容だ。これまでは緊急事態宣言などが発令されれば経済社会活動を抑制するのが基本だったが、改定版は「第三者認証制度やワクチン・検査パッケージを活用し、経済社会活動を継続できるように取り組む」と明記した。
改定版では緊急事態宣言の発令中も、感染対策に関する第三者認証を受けた飲食店は午後9時までの営業と酒類の提供が認められる。入店時にワクチン接種証明や陰性証明の提示を求めるワクチン・検査パッケージを利用すれば、5人以上での会食も可能だ。イベントの人数上限は撤廃され、県境をまたいだ帰省も自由になる。
経済社会活動のブレーキを緩めるのが改定版とすれば、経済対策はアクセル。事業規模が80兆円に迫る経済対策には、需要喚起策「Go To トラベル」「Go To イート」の再開や「がんばろう! 商店街」事業などが盛り込まれた。
◇生煮え
首相が経済社会活動を重視するのは、米国などがコロナ前の日常を徐々に取り戻す中、日本がスタートダッシュで出遅れかねないとの危機感からだ。安定政権を築けるかどうかの分水嶺(れい)と目される参院選が来夏に迫り、「実績づくりを急がなければならない」(周辺)との焦りもある。
「スピード感」(首相)を重視したためか、ワクチン・検査パッケージは生煮えと取れる部分も少なくない。ワクチン効果は時間とともに薄れるとされているものの、接種証明の有効期限は「当面定めない」と中ぶらりんのまま。状況がどこまで悪化すれば運用を停止するかも詰まっていない。
菅義偉前首相は在任中、経済社会活動の継続にこだわって「Go To トラベル」の停止が遅れ、感染再拡大を招いたと批判を浴びた。
ワクチン接種が進んだ今は当時とは状況が違うものの、ワクチン接種者が感染する「ブレークスルー感染」は一定の割合で生じる。実際、ワクチン接種率の高いドイツでも感染が再拡大し、1日当たりの感染者が5万人を超える日が続く。
首相は医療提供体制を強化すれば、感染がある程度拡大しても医療逼迫(ひっぱく)には至らないとみている。改定版は「入院を必要とする者を確実に入院につなげる体制を整備する」とうたい、今夏のピーク時より1万人多い3万7000人が入院できる体制を月末までに構築すると明記した。
ただ、病床確保は安倍・菅政権でも進まなかった課題で、専門家からは早くも「なかなか難しい」との声も漏れる。19日のコロナ対策分科会では第6波への不安から3回目のワクチン接種を早めるべきだとの声が続出。自民党中堅は「首相が足をすくわれるとしたら第6波だ」と語った。