’80年代の空気を体現していた…『シティーハンター』の主人公が画期的だった「2つの要素」
政治や文学を熱く語ることをやめた若者たちは、ひたすら恋やオシャレに励むようになる。女にうつつを抜かすのは決して恥ずかしいことではない。少年マンガでも重く汗臭い「熱血スポ根」はダサいものになり、明るい恋愛を描く「ラブコメ」が大ブームとなる。この当時、「軽薄」と「明るいスケベ」こそ正義だった。
まさにそれを体現した人物が冴羽りょうだ。
北条司の流麗なタッチで描かれる美女、彼女たちのセクシーショット、海坊主や冴子といった個性豊かなキャラクターたち、スリリングなストーリーなど、本作の魅力はいくつもあるが、やはり最大のものは主人公の造形だろう。
自他ともに認める女好きで普段はひたすら軽いのに、いざというときはビシッと決める。あるいはシリアスなほうが本性で、普段は能天気を装っているだけとも受け取れる。
いずれにせよ、従来の重く深刻ぶったハードボイルドではない。明るいスケベとクールの二面性。カッコいいだけではないからカッコいい。「りょう」は理想の男だとあこがれる少年読者も多かった。