女性は家庭を守るのが理想?今見たいユートピアスリラー映画
アリスを『ミッドサマー』での狂気に溢れた演技が高く評価されたフローレンス・ピュー、ジャックをシンガーで『ダンケルク』や『エターナルズ』に出演した経験を持つハリー・スタイルズが演じている
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』で長編監督デビューした女優オリビア・ワイルドの長編2作目。異常なまでに完璧に整備された町並みや、明るく親切でユーモアのある完璧な隣人たち。“男は外で仕事をし、女は家庭を守る”という世界に住む“幸せ”な人々の生活をこれでもかと描き続ける。そんな隙がない世界がかえって不穏さを際立たせ、不気味な雰囲気がそこかしこに漂うのが本作の世界観だ。妻たちは何かおかしいと感じていながらも、目を伏せ意志を持って無知でいようとする。この理想的な生活を失いたくないゆえ、絶対に波風をたてたくないと考えているが、アリスだけはそうできなかった。製作/脚本&原案を担当したケイティ・シルバーマンは「自分が身を置いている体制が破綻していると認めるのは いかに難しいかということを示したかった」と語る。男性によって作られ組織化された世界を客観的に見ること、そして女性がその不自然さに気づくというテーマを、ユートピアという狂気を用いてファッショナブルに描く。またアリスの隣人であるバニーのように自らこの世界を選び、家父長制のなかで生きる選択をする女性がいることも否定しない。自分にとって、またパートナーにとってのユートピア、幸せとは何なのか、を考えさせられる。胸の奥に響くような重低音サウンドがストーリーを盛り上げるので、劇場での鑑賞がおすすめだ。
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建築家リチャード・ノイトラ設計のカウフマン邸で撮影されたシーンは必見。アリスのスタイルはブリジット・バルドーやリタ・ヘイワース、ジャックはフランク・シナトラやジーン・ケリーをイメージしたという
『ドント・ウォーリー・ダーリン』
TOHOシネマズ六本木ヒルズなど全国の映画館で公開中
配給:ワーナー・ブラザーズ映画
BY KANA ENDO