大の映画ファン、松本清張好き…思想史家・坂本多加雄氏没後20年シンポ
シンポでは、苅部直東大教授が基調講演を行い、独創的だった思想史家の軌跡を紹介。若手研究者からは、坂本氏の学生時代のネットワークや読書遍歴などが報告された。
後半では、同僚や弟子らが座談会で思い出やエピソードを披露した。国際協力機構(JICA)特別顧問の北岡伸一東大名誉教授は、坂本氏について「戦後民主主義というイデオロギーから自由だった最初の政治学者の一人」と指摘。一緒にアジア旅行をする約束を交わし、果たせなかった無念さを吐露した。弟子の音楽評論家で思想史家の杉原志啓氏は、学術書だけではなく松本清張など大衆小説まで読み込んでいた逸話を紹介。学生時代から大の映画ファンで「飲みに行くといつも映画の話だった」と振り返った。
井上寿一学習院大教授は「教育は研究であり、研究は教育である。学生の反応から新たな研究の視点が得られる」といった坂本氏の持論を紹介。議論することが前提のゼミ合宿では「まず知ることが大事だ」として、学生たちと東京裁判のドキュメンタリー映画を見ていたことなどを明かし、教育者としての面影をしのんだ。