「親友なのに本名を知らない」…タイの「呼び方事情」が“変すぎる”ワケ
日本では考えにくいことだが、タイでは日常茶飯事だ。なぜなら本名を使うのは役所などの公式な文書だけで、ふだんは愛称で呼び合うのが普通だからだ。
こうした理由で生まれた愛称の文化だったが、実用的な利点もある。サンスクリット語の本名は長すぎて、覚えにくい。目上の人を敬称で呼ぶ時を除けば、愛称で呼び合うほうが楽なのだ。
名前は歴史や伝統を色濃く反映している。同じ東南アジアでも、フィリピンではまったく違った名前文化がある。
フィリピンは16世紀にスペインによって植民地化され、多くの人々はキリスト教の聖人にちなんだ名前をつけるようになった。さらに19世紀半ばにはスペインのクラベリア総督が「アルファベット順姓カタログ」を配布し、姓を整理した。
ところがこの時、ある地域はAからF、ある島はDからHというようにバラバラに配布されてしまい、地域によって姓の偏りが生じてしまった。今でも、姓を聞けばどの地域の出身かわかることがあるという。
名前ひとつとっても、国によってこれだけ違う。世界は広いのだ。(桜)
「週刊現代」2023年6月3・10日号より