核廃絶へのアート ヒロシマ賞、アルフレド・ジャー展 食のコラボも
◇3年越しの開催 コロナや改修工事で
ヒロシマ賞は、市が1989年に創設。デザイナーの故・三宅一生さん(第1回)や中国出身の現代美術家、蔡國強さん(第7回)、オノ・ヨーコさん(第8回)らが受賞している。
第11回(2018年度)はチリ出身で米ニューヨーク在住のアーティスト、アルフレド・ジャーさん(67)。20年に開催予定だった授賞式と記念展は新型コロナの影響で延期となり、同館の大規模改修工事に伴うリニューアルオープンを経て3年越しで開かれる。
ジャーさんは歴史的な悲劇や社会の不均衡と向き合い、写真や映像、インスタレーション(空間芸術)を用いて政治や社会問題を訴えてきた。被爆50年の1995年に同館で開かれた記念展「ヒロシマ以後 現代美術からのメッセージ」に作品を寄せたほか、2013年には東日本大震災で被災した学校の黒板に、詩人の栗原貞子さんの代表作「生ましめんかな」の文字を浮かび上がらせる作品を発表した。
◇食べてみて 中南米の家庭料理やパン
原爆投下2日後の広島で生まれ、「生ましめんかな」のモデルとなった被爆者、小嶋和子さん(77)=南区=の長男大士(ふとし)さん(42)は、経営する飲食店「がんぼう」(南区)で18日からコラボメニューとして、鶏肉やグリーンピース、ニンジン、タマネギなどを煮込んだチリの家庭料理を提供している。「新たな世界に触れるきっかけにしてほしい」と期待する。コラボメニューは夜のみで、記念展の会期と同じ10月15日まで。
同館近くのパン屋「ブズワン」(南区)も中南米などで親しまれる「エンパナーダ」を販売している。スパイスを効かせたひき肉やタマネギ、ゆで卵などをフォカッチャ生地で包み、サクサクとした食感を味わえる。オーナーシェフの岡本泰さん(50)は「作品の余韻に浸りながら味わって」と笑顔で話す。
◇もっと分かる 書店に特設コーナーも
また「広島T―SITE」広島 蔦屋書店(西区)では、店の一角に記念展の紹介コーナーを設けた。ポスターやチラシのほか、アートで社会問題を提起している芸術家や写真家の作品集など16タイトルが並ぶ。同店アートコンシェルジュの犬丸美由紀さん(53)は「作品を見て心が揺さぶられることが、多様な社会問題を考える入り口になる。本を読んでさらに深く知ってほしい」と話していた。