四川料理の人気店〈飄香(ピャオシャン)〉のシェフの仕事が“独り占め”できる新店舗。
2005年に代々木上原に1号店をオープンして以来、本場の味わいを発信し続ける四川料理の名店〈飄香〉。長く愛されてきた麻布十番の本店を新たに広尾へ移転し、今年7月4日、晴れてグランドオープンした。
オーナーシェフである井桁良樹氏は、若くして単身中国へ渡り、四川省の省都・成都で500以上のレシピを習得したという、まさに四川料理に魅せられた人物だ。「24の味付けと56の調理法」があるという四川料理の世界を、創業時から化学調味料は一切使用せず、現地の香辛料や自家製の発酵調味料を駆使して表現豊かに伝えてきた。
現在は本店のほか、伝統的な宴席料理を供する六本木ヒルズの〈老四川 飄香小院〉や銀座三越〈中國菜 老四川 飄香〉、庶民の味である屋台料理をテーマにした代々木上原〈竹韻飄香〉を展開。本場の味を伝承するにとどまらず、〈飄香〉の味としてさらに磨き続ける探究心と真摯な姿勢が、多くのファンに支持されている。
50席超の麻布十番時代から、新たな本店となるこの店は、席数わずか16席。店に一歩入ると、空間の半分以上を占める大きなオープンキッチンが視界に飛び込んでくる。このキッチンは井桁シェフが日々料理を探求するラボのような場所。お客は調理の音や香りを間近に体感でき、まるでプライベートダイニングにお邪魔したかのような感覚が味わえる。いわば全席が“シェフズテーブル”なのだ。
昨秋、惜しまれつつ麻布十番店を閉めた際、既にこうしたスタイルにすることを決めていたのだとか。厨房に立つのは、なんと井桁シェフ一人。仕込みから仕上げまでほぼ“ワンオペ”で行うという贅沢さに、自ずと期待が高まる。
窓には吉兆を表す格子柄が配され、幸福の象徴である2体の馬のオブジェや縁起のいいモチーフを織り込んだ藍のタペストリーなど、シェフが見立てた中国の美しい意匠や美術品たちが客を出迎える。