美村里江のミゴコロ わが家の漫画飯
漫画やアニメに登場するおいしそうなご飯を胸に抱いて成長した大人が、経済力と実行力を得てそれを再現する。その再現度の高さには驚くばかりである。
わが家も漫画やアニメを好む夫婦なので、ときどきチャレンジしてみる。私はもともと食いしん坊で料理も好きなので、気になればすぐまねて作ってみる。
しかし、料理をしない夫には想像がつかず困難に思えるらしく、その分作った際のリアクションがいい。例えば長編アニメ「ハウルの動く城」で、弟子のマルクルがカルシファーの火で焼いた厚切りベーコンエッグ。それっぽい商品を見つけ、卵とともにいい感じに焼き目をつければいいだけだが、大感激して何度もリクエストを受けている。
さて、そんなわれわれは最近、タツノコプロ制作のリバイバルヒーローアニメ作品を鑑賞した。
知識が薄いエリアだったので、「実はガッチャマンは健ひとり、あとは科学忍者隊の隊員」「テッカマンは変身の度に高圧電流の激痛に耐えている」などの夫の解説に驚きつつ、作品内容も大変楽しく拝見した。
その作中、新造人間キャシャーンに味覚がない表現とともに、「アボカドのクリームパスタ」が登場。夫がどんなパスタかと聞いてきた。クリーミーな味わいのアボカドと生クリームのコンビはそこまで定番ではないので、キャシャーンと一緒に見ている人にどんな味か想像してもらいたいのでは―と説明した。
「おいしそう」と目を輝かせる夫。よしよし、作ってみましょう。
強めに塩味をつけたエビを刻んだニンニクと炒め、固くなる前に一度上げておく。スライス玉ねぎ半個分を炒め、クリームを100ミリリットル、濃いめのだし100ミリリットル。顆粒(かりゅう)のコラーゲンでとろみをつけたソースに、ゆで上がったパスタ、大きめの角切りにしたアボカド、エビを再投入。あえつつ塩コショウで調整して、完成。
「今まで食べたパスタで一番おいしい!」
今後の定番として「キャシャーンパスタ」と夫が命名。大いに喜んでくれてよかったが、この10年間作ってきた多数のパスタの立場は…。ちょっとだけ複雑な漫画飯製作担当であった。