ロマン感じる必見ジュエリーも!『宝石 地球がうみだすキセキ』展をプロが解説
本間恵子(ジュエリー・時計ジャーナリスト)●ジュエリーデザイナー、宝飾誌編集者を経て、独立。女性誌・専門誌・新聞を中心に執筆を行う。国内外で取材を続け、セミナーや講演にも幅広く活躍中。
本展の白眉は、会場の最後に展示されるおよそ60点のアンティークジュエリー。収集の質の高さ、貴重さで世界的に知られるアルビオン アート・コレクションをじっくりと鑑賞することができるのです。
こちらは大粒のエメラルドをあしらった18世紀のペンダント。月桂樹のクラウンとパールを髪に飾った女帝エカテリーナ2世の横顔が刻まれています。エカテリーナ2世からこれを拝領したアレクセイ・オルロフ伯爵は、女帝の即位に深く関与したとされる重要人物。女帝の愛人として絶大な権力を誇ったグリゴリー・オルロフ伯爵の弟でもあります。
エメラルドは衝撃に弱く、彫刻には向かないのにもかかわらず、これほど精緻な彫りを刻んでいることには驚くばかり。女帝はオルロフ伯爵の忠義をたたえてこうした高価な宝石を贈ったのでしょう。
〈写真〉ロシア大帝エカテリーナ2世よりアレクセイ・オルロフへ贈られたエカテリーナ大帝の肖像 エメラルド・インタリオ 18世紀 個人蔵
ダイヤモンドとピンクトパーズをあしらった本作は、1810~1830年頃に作られ、ナポレオン時代の宮廷のムードを今日に伝える豪奢なデザイン。ティアラ、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリングからなるパリュール(ジュエリー一式)です。
ドイツにかつて存在したヴュルテンベルク王国の王妃マリーが持っていたとされる名品で、王家に伝えられるものだけに、華やかさと高貴な気品をあわせ持っています。かすかに紫を帯びたローズピンクはウラル産トパーズの特徴。これほどの宝石を揃えるのに、一体どれだけの時間が費やされたことでしょう。
〈写真〉ヴュルテンベルク王室旧蔵 ピンク・トパーズとダイヤモンドのグラン・パリュール 1810-1830年頃 個人蔵