蔡國強からボーダレス・ドールズ、部屋のみる夢まで。今週末に見たい展覧会ベスト10
国際的な注目を集めてきた現代アーティスト・蔡國強(ツァイ・グオチャン、さい・こっきょう)の大規模個展「蔡國強 宇宙遊
一〈原初火球〉から始まる」が、東京・六本木の国立新美術館で開幕した。
蔡にとってマイルストーンとなっている、91年に東京のP3 art and environmentで開催した個展「原初火球―The Project for
Projects」のタイトルを引用した本展は、30年前に発表された「原初火球」を蔡の芸術における
「ビッグバン」の原点ととらえ、この爆発を引き起こしたものや、その後今日まで何が起きたのかを探求するものとなっている。歴史的なインスタレーション《原初火球》の再現はもちろんのこと、新作の火薬絵画や大規模なキネティック・ライト・インスタレーションなど、多彩な作品を一堂に見ることができる貴重な機会だ。
会期:2023年6月29日~8月21日
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(金土~20:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:火
料金:一般 1500円 / 大学生1000円 / 高校生、18歳未満無料
三井越後屋の開業350周年。「越後屋開業 350 年記念特別展 三井高利と越後屋―三井家創業期の事業と文化」(三井記念美術館)
三井越後屋が1673年に開店してから350年を迎える今年、三井記念美術館で、特別展「三井高利と越後屋―三井家創業期の事業と文化―」が始まった。
本展では、創業者である三井高利をはじめ、祖父・父母・兄弟・子供たち由来の書画や道具類、創業期の事業の成り立ちや発展を伝える記録類、三井の資産蓄積のなかで三井家の人々により収集されていった名物道具類、そして伊勢神宮や三囲稲荷など三井の信仰にかかわる資料など、三井家に収蔵されていた名品や、これまで一般の目に触れる機会の少なかった歴史資料を展示。三井家創業期の事業や、黎明期の三井家の人々にまつわる文化活動を、歴史資料と美術工芸品を通じて紹介するものとなっている。
会期:2023年6月28日~8月31日
会場:三井記念美術館
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
電話:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月 (7月17日、8月14日は開館)
料金:一般 1000円 / 大学・高校生 500円 / 中学生以下 無料
闇と夢が織りなす作品。「ピーター・シスの闇と夢」(八王子市夢美術館)
昨年から練馬区立美術館などで開催されてきた「ピーター・シスの闇と夢」が、八王子市夢美術館に巡回する。
ピーター・シスは1949年チェコスロヴァキア(現チェコ共和国)生まれ。首都プラハや留学先のロンドンでアニメーションを学んでいたが、当時のチェコスロヴァキアは冷戦の暗い影にのみこまれ、独創的な表現が許されがたい状況にあった。自由な表現を求めるシスは、祖国を離れアメリカでの活動を開始。多くの絵本、イラストやポスターなどを手がけ、いまや現代アメリカを代表する絵本作家へと成長した。本展では、影から光へとたどってきたシスが人生をかけて紡いだ、闇と夢が織りなす作品の数々を公開。ピーター・シスの絵本やアニメーションの原画、ポスターなど、その幅広い創作活動が紹介される。
会期:2023年6月30日~8月31日
会場:八王子市夢美術館
住所:東京都八王子市八日町8-1 ビュータワー八王子2F
電話番号:042-621-6777
開館時間:10:00~19:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月(祝日、振替休日の場合は翌平日)
料金:一般 900円 / 65歳以上、学生(高校生以上) 450円 / 中学生以下 無料
過去最大スケールの回顧展。「甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性」(東京ステーションギャラリー)
醜さも含めた人間の生々しさを描いた異色の日本画家・甲斐荘楠音(かいのしょう・ただおと)。その美術館で二度目となる回顧展「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」が、
京都国立近代美術館から東京ステーションギャラリーに巡回する。
楠音は戦前の日本画壇で高い評価を受けながら、1940年代初頭に映画業界に転身するという異例の経歴を持つ人物。過去最大スケールの回顧展となる本展では、その絵画から映画の衣裳までを展覧することで、甲斐荘が持つ「越境性」に着目するものだ。京都展のレポート記事は
こちら。
会期:2023年7月1日~8月27日[前期7月1日~30日、後期8月1日~27日
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
開館時間:10:00~18:00(金~20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし7月17日、8月14日、8月21日は開館)、7月18日
料金:一般 1400円 / 高校・大学生 1200円 / 中学生以下無料
日本の人形の歴史を振り返る。「私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」(渋谷区立松濤美術館)
日本の人形の歴史を振り返り、その一括りにできない様相を「芸術」という枠に押し込めるのではなく、多様性を持つ人形そのものとして紹介する展覧会「私たちは何者?
ボーダレス・ドールズ」が、7月1日に東京・渋谷の渋谷区立松濤美術館で開幕する。
本展は全10章で構成され、その複雑な様相を持つ日本の人形を通じて、日本の立体造形の根底に脈々と流れてきた精神を問うもの。考古遺物《人形代
[男・女]》から竹久夢二や中原淳一ら一流のデザイナーが参画した作品、彫刻家・荻島安二と向井良吉がつくり出したマネキン、さらには村上隆
とフィギュア原型師・BOMEによる《Ko²ちゃん(Project Ko²)》(1997)まで、幅広い射程を持つものとなる。
会期:2023年7月1日~8月27日([前期] 7月1日~30日 / [後期] 8月1日~27日)※展示替えあり
会場:渋谷区立松濤美術館
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
電話番号:03-3465-9421
開館時間:10:00~18:00(金~20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし7月17日は開館)、7月18日
料金:一般 1000円 / 大学生 800円 / 高校生・60歳以上 500円 / 小中学生 100円
ミレーを起点に。「ミレーと4人の現代作家たち- 種にはじまる世界のかたち -」(山梨県立美術館)
山梨県立美術館のコレクションを代表するジャン=フランソワ・ミレー(1814~75)の《種をまく人》。これを起点とした展覧会「ミレーと4人の現代作家たち
-種にはじまる世界のかたち-」が7月1日に開幕する。
開館45周年を記念して開催されるこの展覧会では、ミレーの作品とともに、現代を生きる4人の現代作家の作品を展観することで、多様な解釈を開くことを試みるもの。参加作家は
淺井裕介、志村伸裕、丸山純子、山縣良和。新作も初公開される。
会期:2023年7月1日~8月27日
会場:山梨県立美術館
住所:山梨県甲府市貢川1-4-27
電話番号:055-228-3322
開館時間:9:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:7月3日、10日、18日、24日、31日、8月7日、21日
料金:一般 1000円 / 大学生 500円/ 高校生以下無料
17作家による超絶技巧。「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」(あべのハルカス美術館)
明治工芸のDNAを継承し多様な素材と技法を駆使して、新たな領域に挑む現代作家の新作を中心に紹介する展覧会「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」が、大阪の
あべのハルカス美術館で7月1日に幕を開ける。
2017~19年に開催された「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」のアップデート版となる本展では、木・金属・陶磁・漆・ガラス・紙など、様々な素材による現代作家の意欲的な表現を一堂に紹介。超絶技巧の現在形を探るものとなる。
会期:2023年7月1日~9月6日
会場:あべのハルカス美術館
住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
開館時間:10:00~20:00(月土日祝~18:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:7月3日
料金:一般 1600円 / 大学・高校生 1200円 / 小・中学生 500円
植物が美術にもたらしたものとは? 「植物と歩く」(練馬区立美術館)
練馬区立美術館で、植物がいかに作家を触発してきたかを同館コレクションを中心に探る展覧会「植物と歩く」が7月2日より開催される。
本展の印象的なタイトル「植物と歩く」には、植物の営む時間と空間に感覚をひらき、ともに過ごすという意味を込められているという。会場は、プロローグとエピローグを加えた計5章で構成。植物学者・牧野富太郎による緻密な植物図や
須田悦弘の木彫、大小島真木
がインドネシアの木にまつわる風習から着想して制作した作品など、洋画、日本画、ガラス絵、版画、彫刻、和本、植物標本といった様々なジャンルの作品が展示される。
会期:2023年7月2日~8月25日
会場:練馬区立美術館
住所:東京都練馬区貫井1-36-16
電話番号:03-5848-3320
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(7月17日は開館)、7月18日
料金:一般 800円 / 大学・高校生 300円 / 中学生以下無料
部屋にまつわる表現に着目。「部屋のみる夢 ― ボナールからティルマンス、現代の作家まで」(ポーラ美術館)
パンデミックによって生活様式が大きく変化し、移動が制限された状況下で私たちが多くの時間を過ごした「部屋」。19世紀から現代に至るまでの、部屋にまつわる表現に特徴のある作家たちを取り上げ、小さな世界のなかで織りなされる親密な記憶や夢想のありようを、改めて見つめ直す展覧会が、7月2日に閉幕する。
本展の出展作家は、ベルト・モリゾ、ヴィルヘルム・ハマスホイ、ピエール・ボナール、エドゥアール・ヴュイヤール、アンリ・マティス、草間彌生、
ヴォルフガング・ティルマンス、髙田安規子・政子、佐藤翠
+守山友一朗。なかでもポーラ美術館に新たに収蔵された草間彌生とヴォルフガング・ティルマンスの作品は今回が初公開となっているほか、ステイホーム以降の新たな感性を伝える、現代作家たちの作品も見どころのひとつだ。展覧会レポートは
こちら。
会期:2023年1月28日~7月2日
会場:ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285 ポーラ美術館
電話番号:0460-84-2111
開館時間:09:00~17:00 ※入館は16:30まで
休館日:会期中無休
料金:一般 1800円 / 65歳以上 1600円 / 大学・高校生 1300円 / 中学生以下無料
コレクターと美術館の関係を考える。「野崎道雄コレクション受贈記念 見えないもの、見たいこころ」(神奈川県立近代美術館 葉山)
神奈川県立近代美術館 葉山で、コレクターによる現代美術の寄贈作品が一挙に公開されている。
同館では2022年度、アートコレクター・野崎道雄(1931~)からゲルハルト・リヒター
を中心とする150点余りの寄贈を受けた。眼科医であった野崎は、1980年代より近・現代の美術への造詣を深め、作品の収集を行っていた野崎。この展覧会では、野崎がとりわけ心を寄せたリヒターに加え、
ジグマー・ポルケ、ヨーゼフ・ボイス、マルセル・デュシャン、ロイ・リキテンスタイン
らの作品を精選し、長年の収集に込めた思いの一端とともに紹介している。コレクターと美術館の関係性を考えるうえでも、必見の展覧会だ。レポート記事はこちら。
会期:2023年4月22日~7月2日
会場:神奈川県立近代美術館 葉山
住所:神奈川県三浦郡葉山町一色2208-1
電話番号:046-875-2800
開館時間:9:30~17:00
休館日:月
料金:一般 250円 / 20歳未満・学生 150円 / 65歳以上 100円 / 高校生 100円 / 中学生以下無料