都立高「進路多様校」の志願者増へ 講座充実、生きる力支援 進学校との二極化是正目指す
■目立つ定員割れ
都教委によると進路多様校十数校は近年、定員割れが目立つ傾向にある。14日に発表された令和5年度の都立高校一般入試の最終応募状況でもその傾向がみてとれた。
その理由を都教委は、私立高校授業料実質無償化制度の対象世帯が、2年度から年収「760万円未満」から「910万円未満」へ拡大されたことなどが影響していると分析。加えて、都立高より早く推薦入試を実施し合否を出す私立高に、生徒が早々と入学を決めている事情もある。
都教委は「多様な授業を受講でき設備も充実した私立高を志望する傾向が年々顕著になっている」と危機感を強める。
都教委は、進路多様校の活性化に知恵を絞ってきた。5年度からは、就職した際に役立つスキルが身に付くよう実用英語検定講座の実施による英語力の習得支援を行い、表計算ソフトなどの使い方を学ぶ講座も実施する方針だ。民間事業者との連携を通じ、生徒が職場を体験する機会を作り、希望する進路の実現に向けた学習意欲の醸成を図る取り組みも進める。
都教委は「生徒が将来にわたり、社会で生きるために必要な基礎力を身につけることができるよう支援することが重要」と強調する。
■私立高に流れる生徒
一方で、難関大学への合格率が高い都立の進学指導重点校は、高い応募倍率を維持している。
進学指導重点校全7校の5年度一般入試の最終応募倍率は西高(杉並区)が1・83倍となり、授業料無償化制度が拡充される前の平成31年度入試の倍率を上回った。都内屈指の進学校、日比谷高(千代田区)と青山高(渋谷区)は2倍超、他の4校も依然として1・5倍前後の倍率を維持していた。
都教委は「都立の進学校は、高倍率の有名大学付属の私立高と拮抗(きっこう)するほどの人気を維持している」と自信を見せる。
とはいえ、都教委が今月発表した公立中学生の進路状況調査によると、3年度に都立高全日制に進学したのは51・4%で、平成24年度の56%より4・6ポイント減少。一方、私立高全日制へは令和3年度は33・6%で、平成24年度の31・4%より2・2ポイント増加した。
都教委は「人気の高い進学校と、定員割れが続く進路多様校との応募倍率の格差を是正し、都立高全体で私立高に負けない学校づくりが必要」とする。「今後も生徒一人一人に応じたきめ細かで多様な教育を実現させ、都立高の魅力向上に向け、尽力する」と話した。